5月は、意外に花粉の量も種類も多い!
一般に、「花粉症」というと、スギ花粉症を指し、現在、日本人の約38.8%がスギ花粉症だといわれています。そして、「花粉症/季節性アレルギー性鼻炎」は、2月から4月がピークで、ゴールデンウィーク頃には終わっていると考えられています。
でも、日本では、約60種類の植物が花粉症をひきおこすと報告されていて、空気中の花粉の量も種類も多いのが、実は5月!!
さらに、花粉症の人は、季節にかかわらず、特定のくだものや野菜に反応して症状が発生することもあります(交差反応)。
花粉症のような症状がでるのは、「花粉」だけに限りません。目のかゆみほか、なんらかのアレルギー症状がでているあなた、何かすっきりしないあなたのために、症状の軽減はもちろんのこと、アレルギー体質の改善をめざすための食事やサプリメント他、効果的ヒントを伝授しましょう。
- 花粉は、1年中飛散している!
- 花粉症のメカニズム
- アレルギー改善にも、ストレスケアは重要
- 食べるものの影響は、思いのほか大きい – 心がけたい5つのポイント
- 栄養療法で花粉症に負けない身体をつくる
- まとめ
花粉は、1年中飛散している!
季節や地域によって花粉の時期は多少ズレますが、日本国内では主に以下の植物の花粉が、花粉症の原因とされています。
花粉は、1年中飛散しているのですね! スギ花粉は、もうほとんど飛んでいないとはいえ、カバノキ科、ヒノキ科、そして今まさにイネ科は、ピークをむかえているのです。
季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎
花粉症とは、鼻や目、のどなどの粘膜にアレルゲンがつくことによって、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみや充血、ノドや皮膚のかゆみなどのアレルギー症状がおこる疾患で、「季節性アレルギー性鼻炎」ともよばれます。原因となる花粉の飛ぶ季節にだけ症状がでます。
これに対して、一年中症状がでるケースを、「通年性アレルギー性鼻炎」とよびます。通常、カビ、ダニ、ハウスダスト、ゴキブリ、ペットの毛やフケ、あるいは、職業上のアレルゲンなどに鼻や目が接触することによってひきおこされます。
どんなアレルギーでも、日常生活に多くの悪影響が
近年、複数の花粉に反応する人や、花粉症と通年性アレルギー性疾患の両方に悩まされている人が増えているといわれます。ほぼ一年中、目のかゆみや鼻水などのアレルギー反応に悩まされる人が多いということですね。
花粉症をはじめとするアレルギー性疾患は、職場や学校でのパーフォーマンス、家事の効率の低下を招きます。そればかりか、メンタルヘルスへの影響、学力、記憶力の低下なども指摘されており、生活の多くの領域に悪影響をあたえます。一日も早く、アレルギー体質からの脱却を目指しましょう!
花粉症のメカニズム
花粉症は、本来、ヒトに悪さをしない無害な花粉を身体が有害だと誤認して、それを排除しようと過剰に反応してしまうアレルギー反応の一つです。
私たちの身体には外部から入りこんでくる異物に対応する防御作用、すなわち免疫システムが備わっています。この免疫システムが正常に働いていれば、身体に害をあたえる物質を見わけ、身体を守るための反応をおこします。
ところが、何らかの理由で免役システムが誤作動をおこして暴走すると、本来は身体にとって無害な物資に対しても反応をおこしてしまうのです。そのときに、過剰に反応するあまり自分の身体を傷つけてしまいます。
過剰反応を起こす物質には花粉をはじめ、ダニやハウスダスト他いろいろあり、これらをアレルゲンとよびます。アレルゲンが体内にはいると、免疫グロブリン E (IgE) とよばれる特定のタイプの抗体が生成されます。IgEは、マスト細胞にくっついて刺激をあたえ、炎症をおこす物質(ヒスタミン、ロイコトリエン他)を放出させます。これらが、それぞれ、また相互に働いて、さまざまな症状をひきおこします。
アレルギー反応による主な症状は、目のかゆみや涙、鼻水、くしゃみ、皮膚のかゆみやじんましんなど、軽いものです。しかし、なかには、生命を脅かす深刻な健康被害をもたらす、アナフィラキシーをひきおこすこともあります。
アレルギー応答は、複雑
いくつかのタイプの免疫応答が花粉症に関与していることがわかっています。これらには、下記がふくまれます:
- IgE抗体(即時アレルギー反応に関連する抗体の一種)
- マスト細胞の活性化とヒスタミンやロイコトリエンなどの産生および放出の増加
- 炎症を促進する炎症性サイトカイン、または、他のメッセンジャーの増加
- 呼吸器系の白血球の増加
花粉症の発症における他のアレルギーと共通する別の要因としては、腸の透過性の増加、すなわち、「リーキーガット(腸もれ)」の存在もあります。
花粉症に関与するアレルギー応答の詳しいメカニズムについては別の機会に譲りますが、ここでいえることは、アレルギー応答のメカニズムは、とても複雑だということ。それゆえに薬での治療には、限界があるのです。
花粉症の軽減/改善には、免疫調整力の強化、抗ヒスタミン/抗炎症対策、活性酸素対策(抗酸化)が不可欠。これらに対しては、ストレスケア、食生活をふくむライフスタイルの見直し、サプリメントの活用などの適切なセルフケアが効果を発揮してくれます。
アレルギー改善にも、ストレスケアは重要
花粉症の症状を緩和する多くの処方薬や市販薬がありますが、あくまでも対処療法です。花粉症にうち勝つ身体づくり/体質改善には、ストレスケアとともに、食生活をふくむライフスタイルを見直すことからはじめなければなりません。
花粉症の 2,000 人を超える人々を対象に英国のNational Pollen and Aerobiology Research Unitが実施した調査では、ストレスや運動などのライフスタイル要因が花粉症に大きな影響をあたえることが確認されています。
ストレスは、免疫システムに影響をあたえ、花粉症および各種アレルギーの症状を悪化させます。前述の調査では、ストレスと花粉症の症状の重症度とのあいだに明確な関連性が示されています。身体のどのようなトラブルにおいても、ストレスケアは必須ですが、ストレスレベルの低下にともなって、アレルギー症状が軽減することが確認されています。
思考・行動・栄養からのアプローチ
ストレスケアは、思考・行動・栄養の3方向からのアプローチが大切です。
「思考」とは、ものの見方、考え方を少し変えたり、負の感情をためこまないようにすること。瞑想/マインドフルネスなども効果的です。
「行動」には、運動、睡眠、呼吸法や入浴法、森林浴ほか、リラクセーション などがふくまれます。こうしたことを、うまくとり入れながらストレス管理をしていきましょう。
定期的な運動は、ストレスレベルを下げるだけでなく、花粉症の改善にもやくだつことがわかっています。調査によると、運動をしている花粉症の人ほど、症状が軽いとのことです。
よく眠ることも、ストレスケア(行動へのアプローチ)の重要なポイント。夜ぐっすり眠れる花粉症の人は、症状が最も軽い傾向にあることがわかっています。
ある調査によると、7 時間以上の睡眠をとっていた人の 8 人に 1 人 (13%) が重度の症状を報告したのに対し、定期的に 5 時間以下の睡眠の人は 5 人に 1 人 (21%) でした。
※こちらの記事もご参考に→【睡眠の質を上げるための習慣、睡眠環境、食べ物/飲み物とストレスケア】
栄養からのアプローチは、すべてのベース
「思考」や「行動」からのストレスケアは重要ですが、栄養のこと抜きでは効果は限定的です。思考や行動は、栄養によって大きな影響をうけるからです。
私たちの身体は、食べ物でできていますので、どのような場合も健康的な食生活が基本になります。とはいえ、どれだけバランスのいい食事を心がけていても、必要な栄養素の確保は難しいといわざるをえません。
最低でも、ストレスで消費されやすい栄養素の確保は必須です。そのうえで、免疫系調整に働く栄養素、抗ヒスタミン作用、抗酸化作用、抗炎症作用のある栄養素などなど、アレルギー対策に必要な栄養素の確保を考えます。
重度なアレルギー反応には対処療法的に薬が必要になることもあるでしょう。でも、体内に備わる免疫の調整力、身体の治癒力を最大限に活用し、ストレスケアをふくめ、極力自然の方法でケアしていきたいですね。
食べるものの影響は、思いのほか大きい – 心がけたい5つのポイント
食生活のゆがみは、身体が本来もっている免疫力を低下させたり、調整がうまくいかないような状況をつくってしまいます。どのような場合でも、身体に必要な栄養素をしっかり確保できる健康的な食生活が基本になりますが、とくに、アレルギー症状の軽減、アレルギー体質から脱却を目指すために必要な重要なポイントをあげましょう。
抗炎症食を基本に
花粉症というのは、炎症疾患ですから、炎症をおさえるような食事(抗炎症食)をしていくことが基本になります。「抗炎症食」というと難しそうですが、そんなことはありません。
なるべく加工されていないホールフード(自然食)を基本に、栄養素がしっかりふくまれる、健康的な食事をしていくことがベースになります。主食(ご飯やパン、麺類などの糖質)の食べ過ぎを控え、かわりに野菜、くだもの類を多く食べるようにするとともに、不健康な脂質を排除し、オメガ3系の脂肪酸―脂肪の多い魚(サーモン、サバ、イワシなど)や亜麻仁油などを多くとりいれるようにします。
当然ながら、炎症を誘発するような食品は避けます。
炎症誘発性食品といえば、砂糖、精製された炭水化物(小麦など)、植物油、加工食品を指します。清涼飲料水、スイーツ類、スナック類、その他ジャンクフードは排除していくということですね。
砂糖(さまざまな甘味料)や小麦粉は、ありとあらゆる食品につかわれていますので、ご注意を! また、乳製品が問題をおこすケースが多いので、花粉症の人はもちろん、どのようなアレルギー症状であっても、なんらかの症状がでている人は、避けたほうが無難といえます。
低タンパク食では、お話にならない
ヒトは、「タンパク質の塊」であり、またタンパク質が生命現象のすべてを握っているといっても過言ではありません。タンパク質は、私たちの身体の細胞の主な構成成分です。さらに、酵素やホルモン、免疫タンパクをはじめ、十万種類以上ものタンパク質が体内でつくられているからこそ、私たちの生命は維持されています。免疫にも多くのタンパク質が関わっていて、その正常な働きもタンパク質に依存しています。
私たちが食事から摂取するタンパク質は、消化の過程でアミノ酸にまで分解され、それが体内に吸収された後、さまざまな体内のタンパク質につくりかえられます。逆にいうと、食事からのタンパク質が不足すれば、体内のタンパク質づくりに支障がでるということです。
食材としてのタンパク質には、肉や魚、卵、大豆製品などがありますが、ヒトは動物ですから、動物由来のタンパク質のほうが、体内でのタンパク質づくりに有利です。植物性のタンパク質を食べるときには、動物性のタンパク質とくみあわせて食べるようにするのが理想です。
タンパク質の摂取量としては、一食あたり最低でも自分の手(指先から、手首までの全体)の大きさを目安に、消化に十分に気をつかって食べるようにします。タンパク質の確保が難しい場合は、ホエイプロテイン・アイソレートをうまくやくだてるのもいいでしょう。
日本人は、タンパク質の消化が苦手といわれます。未消化のタンパク質は、腸内微生物叢を乱し、免疫力の低下や免疫の調整力の低下につながります。常にゆったりした気分で良く噛んで食べるように心がけましょう。
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ヒスタミンを多くふくむ食品は、避ける
免疫システムが花粉をアレルゲンとして識別し、花粉症の症状の原因となるヒスタミンを放出することは、お話ししましたよね。通常、体内のヒスタミンレベルは低く、食品中のヒスタミンは問題なく処理/分解されます。しかし、ヒスタミンレベルが高くなっている花粉症の患者さんにおいては、ヒスタミンを多くふくむ食品を食事からとり除くことで、全体的な負荷を減らすことができます。
一般的に、新鮮で加工されていない食品は、ヒスタミンレベルは低いのですが、加工食品、発酵食品や処理/調理してから時間がたっている食品は、ヒスタミンレベルが高いとされます。「発酵食品は健康にいい」といわれていますが、ヒスタミンを分解する酵素が少ない人、あるいは、ヒスタミンが絡むアレルギー症状がでているときは、控えたほうがいいでしょう。
★ヒスタミンが多いとされる食品/飲み物:
- 発酵食品: 発酵野菜(ピクルス、ザワークラウト、キムチなど)、発酵された乳製品(ヨーグルト、ケフィア、熟成チーズ、サワークリームなど)、コンブチャ(紅茶キノコ)、発酵された大豆製品(味噌、しょうゆ、納豆、テンペなど)、発酵穀物(サワーブレドなど)
- 野菜: ナス科の野菜(ナス、トマトなど)、ホウレン草、キノコ類
- くだもの: イチゴ、パイナップル、アボカド、ほとんどの柑橘系(レモンやライム少量であれば問題ない場合も)、ドライフルーツ(レーズン、プルーン、アプリコット、デーツ、イチジク)
- ナッツ類: クルミ、カシューナッツ、ピーナッツ
- 肉類: 発酵肉や塩漬け肉(ベーコン、ソーセージ、サラミ、発酵ハム)、ひき肉、 牛肉
- 魚類: スモークサーモン、魚介類の燻製、アンチョビ、イワシの缶詰
- 調味料: 酢、トマトケチャップ、マヨネーズ
- アルコール類: ビール、ワイン、シャンペン、ウイスキー、ブランディ
※なお、バナナ、アルコール類、紅茶、緑茶、マテ茶、エネルギードリンクなどは、ヒスタミンの分解酵素をブロックするといわれます。これらも症状がでているときには、避けましょう。
(参考:Low-Histamin Diet Health Line [Feb. 6, 2023]より)
交差反応をおこす食品を避ける
特定の花粉にアレルギーがある人は、タンパク質の構造が類似した食物に対してもアレルギー反応をおこします。これ交差反応といいます。
たとえば、スギ花粉症のあなたは、シーズン中はナス科の野菜(なす、トマトほか)を食べると症状が悪化するでしょうし、スギ花粉が飛んでいない季節でも、口の中がイガイガするとか、目がかゆくなるとか、何らかのアレルギー症状がでる可能性が高いのです。
花粉別の交差食品は、要チェック!特定の花粉にアレルギーがある人は、花粉が問題になる季節以外でも、交差反応食品は、極力避けるほうがいいですね。
その他のヒント
★ケルセチンが多く含まれる食品を積極的に食べる
ケルセチンには、体内での抗炎症、抗酸化、さらには、抗ヒスタミン作用をあわせもち、花粉/アレルギー反応の軽減にやくだってくれます(詳しくは、後述)。
ケルセチンを多くふくむ食品としては、タマネギ、リンゴ、ベリー類、アブラナ科の野菜などがあります。なかでもタマネギには、ほかにも多くの抗炎症性および抗酸化性化合物がふくまれているため、特にアレルギーの季節には食事に多くとりいれたい野菜です。
ケルセチンの濃度がもっとも高いのが生の赤タマネギで、白タマネギとネギがそれにつづきます。調理するとタマネギのケルセチン含有量が減少するため、最大限の効果を得るにはタマネギを生で食べるのがベスト。オニオンスライス、サラダやディップに、またはサンドイッチのトッピングなどに使うようにしましょう。
★ハーブ類(スパイス含む)をうまく使う
新鮮なハーブ類(種類による)は、最高の抗酸化食品、抗炎症食品です。ショウガ、バジル、チャイブ、オレガノ、ニンニク、ペパーミント、ローズマリーはすべて優れたヒスタミン低下ハーブです。
たとえば、ショウガは、抗炎症とヒスタミン低下作用で、花粉症による鼻孔や粘膜の炎症を和らげるのにやくだちます。身体を温めるスパイスでもあり、身体をおちつかせ、花粉アレルギーによるうっ血の解消にやくだってくれます。
逆に、花粉症/アレルギー症状がでているときは、シナモン、クローブ、カレー粉、パプリカ、ナツメグ、アニスは避けるようにします。これらはヒスタミンを解放し、マスト細胞反応をひき起こす可能性があります。
★完全消化をめざす
アレルギー関連疾患の多くの治癒実例をもつアメリカの臨床医、サンサム博士は「アレルギーは少なくとも一部は消化能力の問題である。複雑なタンパク質分子を完全に消化できないために患者の身体はこれに敏感に反応してアレルギーの症状をおこすのだ。どんなタイプのアレルギーも消化を改善することが最も重要な治療法である」といっています。
摂取した栄養素がきちんと体内に吸収されなければ、せっかくの栄養素は体内で活用されず、身体の細胞(免疫細胞をふくむ)は正常に働けなくなります。そうした状態を避けるためには、口に入れたものが、しっかり消化されている必要があります。
食事の消化が不完全だと、身体に必要な栄養素が体内にまとも吸収されないばかりか、未消化物質が腸内微生物叢のバランスを乱し、腸内環境を悪化させます。
アレルギー疾患の根底にはリーキーガット(腸壁が漏れやすく)があるといわれますが、未消化のタンパク質がこれに大きく関与しています。また、最近の研究では、腸内微生物叢が免疫系の調整をしていることが分かってきており、その乱れは、免疫系の過剰反応にもつながるのです。
栄養療法で花粉症に負けない身体をつくる
食生活をふくむライフスタイルの見直しとともに、適切なサプリメントの選択と、身体にあった適切な摂取法/摂取量によって、花粉症/アレルギー症状の軽減だけでなく、過剰な/狂った免疫反応を正常化し、症状のコントロールや、花粉症ほか各種アレルギーに負けない身体づくりが可能になります。
花粉症にも抗酸化栄養素は必須
アレルギー反応は、炎症反応でもあります。炎症があるところ、かならず活性酸素が暴れまわり、正常な細胞を傷つけます(これが症状の重症化や、プラスの症状を発生させることにも!)。
活性酸素を除去してくれるのが、「抗酸化栄養素」とよばれる、ビタミンやミネラル、植物成分などです。特定の抗酸化栄養素の多量摂取で、かなり重度のアレルギー症状でも軽減するケースが多々あります。
2000年の研究では、抗酸化物質が低レベルだと、アレルギー反応は3倍ひきおこされやすくなるとしています。高レベルの抗酸化物質を維持することで、アレルギー反応を緩和し、ときには排除することさえできるのです♪
とはいえ、花粉/アレルギー対策に、抗酸化栄養素だけ摂取すればいい、ということではありません。身体に必要な栄養素は多く、全般的に必要な栄養素を確保することが大切です。その上で、抗酸化栄養素ほか、アレルギー症状の軽減/改善に働く栄養素の摂取を考えます。
ここでは、
①抗酸化力+抗ヒスタミン作用がある栄養素として、ビタミンC、ビタミンE、フラボノイド(OPC,ケルセチン)、マグネシウム、
②免疫系調整に働く、ビタミンD、ビタミンA、必須脂肪酸、亜鉛、プロバイオティクス、
③免疫反応をひき起こすタンパク質を分解や炎症の軽減に働くダイジェスティブエンザイムなどについてみていきましょう。
なお、サプリメントを多量摂取する場合には、(特に市販薬、処方薬を服用している人は)栄養療法に詳しい医師にご相談ください。
ビタミンC ー ヒスタミンの分子構造を破壊
ビタミンCは、強力な抗酸化物質であると同時に、抗ヒスタミン剤でもあります。ヒスタミンは、すでに見てきたとおり、花粉/アレルゲンに応答して放出され、目のかゆみのほか、さまざまなアレルギー反応をひきおこします。 こうした、炎症性アレルギー反応をビタミンCは軽減してくれます。
抗ヒスタミン薬はヒスタミン受容体をブロックしますが、ビタミンCはそもそも循環に入るヒスタミンの量を減らします。
ビタミンCは、ヒスタミンの分子構造を破壊することにより、血中のヒスタミンの量を効果的に減少させるのです。ある研究では、L-アスコルビン酸を2グラム投与しただけで、ヒスタミンレベルが約40%低下したことが確認されています。
花粉症などのアレルギー軽減には、1日3,000㎎~10,000 mgを何回に分けての摂取がすすめられます。12,000㎎以上(下痢をしないギリギリの量が効果的といわれる)の摂取が好ましいケースもあります。
ビタミンE ー 抗ヒスタミン+抗ロイコトリエン作用も
ビタミンCを2000㎎以上、多量摂取する場合は、かならず、ビタミンEを併用します。ビタミンCのみだと、ラジカルとして細胞にダメージをあたえる可能性があるからです。
ビタミンEも、代表的な抗酸化ビタミンですが、抗ヒスタミン作用があるので、アレルギー反応で生成されるヒスタミンが減少し、花粉症の症状軽減にやくだってくれます。
さらにビタミンEには、抗ロイコトリエン作用もあることが知られます。ロイコトリエンは、ヒスタミンと類似した方法で平滑筋収縮をふくむ多くの望ましくないアレルギーおよび炎症作用をひきおこします(鼻づまりなど)。
サプリメントとしては天然のビタミンEを選択することは鉄則ですが、4種類のトコフェロールおよび、4種類のトコトリエノールすべてをふくむものがベストで、通常、1日400 ~ 800 IUの摂取がすすめられます。
フラボノイド ー 異なる作用で、抗アレルギー効果
植物にふくまれるフラボノイドのなかには、抗酸化&抗ヒスタミン作用で花粉症をはじめとするアレルギーの予防や症状改善効果をもつものがあります。その代表格といえるのが、OPCとケルセチンで、ビタミンCとの相性もバッチリです。
★OPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン)
ヒスタミンが特定の受容体に結合するのを防ぐ抗ヒスタミン薬や、その構造を破壊するビタミン C とは異なり、OPCは、ヒスタミンの生成経路を阻害します。
OPC は抗炎症過程でヒスタミン脱炭酸酵素(HDC)を阻害し、体内で放出されるヒスタミンの量を減少させ、それによって炎症を軽減し、アレルギー反応の重症度を軽減します。また、鼻づまりのもとであるロイコトリエンの生成/発生を抑制することも知られます。
炎症をひき起こす活性酸素に対して強力な抗酸化力(ビタミンEの50倍、ビタミンCの20倍ともいわれる)をもっているので、細胞などへのダメージも予防してくれます。
★ケルセチン
ケルセチンは、強力な抗酸化物質であるとともに、抗ヒスタミン作用があります。花粉症の軽減に働いてくれるメカニズムは:
① Th1/Th2 バランスを改善する可能性があり 、抗アレルギー効果が期待できる。
② 体内のマスト細胞を安定させ、花粉症の症状をひき起こすヒスタミンの放出を防ぐ。
③ 腸の内側を覆う細胞間にタイトジャンクションを形成するのを助け、腸の透過性(リーキーガット)の改善にやくだつ。
食事法のセクションで見てきたとおり、ケルセチンは、さまざまな食品にふくまれています。サプリメントとしては、1 カプセルあたり 300 ~ 500 mg のものを、1 日 2 ~ 3 回摂取します。
マグネシウム - DAOレベルの低下を防ぐ
マグネシウムには、全身に鎮静効果があり、抗ヒスタミン剤でもあります。
マグネシウムは、ヒスタミンに変換されるヒスチジン (アミノ酸) の量を減らすことにより、ヒスタミン代謝酵素、DAO(ジアミンオキシダーゼ) レベルの低下を防ぎます。マグネシウムの摂取量が4日間少ないだけで、ヒスタミンが急速に上昇することが動物実験で確認されています。
1日500㎎~1000㎎の摂取が推奨されますが、吸収の良い、クエン酸マグネシウムまたは、グリシン酸マグネシウムを選択してください。(同量のカルシウムと一緒の摂取がおすすめです)
ビタミンD3 - 免疫調節ホルモンとして知られる
近年、多くの研究で、ビタミンD3(カルシフェロール)が、花粉症/アレルギー性鼻炎の発症に関係していることが報告されています。
30年も前から、動物由来のビタミンD3は、免疫調節ホルモンとして認識されており、実験的研究において、広範囲の免疫細胞およびサイトカインに影響をあたえ、多くの免疫疾患に関連していることが実証されています。
ビタミン D が欠乏すると、免疫調節メカニズムが阻害され、アレルギー疾患が悪化したり、引きがねになる可能性があるといわれます。
ビタミンD3の2,000 IUの摂取で、早い人は数日で変化を実感できるでしょう。ただ、もともと体内のビタミンDレベルが低い人は、実感できるまでもう少し時間がかかりますので、1日5,000 IUまで増やして様子をみてもいいでしょう。
★ビタミンA
ビタミンAは、免疫機能に不可欠なもう1つのビタミンです。鼻腔からの粘液の排出を刺激し、身体から花粉やアレルゲンをとり除くのを助けてくれます。
なお、ビタミンDやビタミンAのような脂溶性ビタミンは、「活性型」を使用するのは、絶対にNGです。前駆体の形で摂取することが必須です。気をつけてください。
必須脂肪酸 ー 炎症の抑制に重要
オメガ3系とオメガ6系をふくむ適切な必須脂肪酸サプリメントの摂取は、炎症の抑制に重要です。一般的な不健康な油脂の炎症誘発作用は、アラキドン酸の過剰生産によるものです。オメガ3系の脂肪酸は、この炎症誘発作用をブロックします。
オメガ3系の脂肪酸といえば、EPAとDHAで、脂肪の多い魚にふくまれますが、サプリで摂取する場合、1日1400㎎は摂取するようにします。
月見草油、ブラックカーレント油、または、ボーレッジ油にふくまれるγリノレン酸(オメガ6系)も強力な抗炎症作用があります。皮膚のかゆみがでている場合は特に効果的です。1日900~1500㎎摂取します。
亜鉛 ー 身体を守る力をパワーアップ
研究によると、亜鉛が不足している場合は、亜鉛の摂取量を増やすことでアレルギーが減少することが示唆されています。
亜鉛が不足している人は、感染から身体を守る細胞である免疫細胞(T細胞とナチュラルキラー細胞)の量が減少。呼吸器系は病原体やアレルゲン、ウイルスや花粉に対して脆弱になります。免疫力の維持には、亜鉛が必須です。
亜鉛は吸収が難しいので、吸収のいいピコリン酸亜鉛を1日50~80㎎摂取するといいでしょう。食事&サプリメントからの摂取が1日100㎎を超えないように気をつけます。
プロバイオティクス ー アレルギーになりにくい体質づくりに
乳酸菌(ラクトバチルス アシドフィルスなど)のプロバイオティクスの特定の菌株は、抗炎症効果と抗アレルギー効果の両方を合わせもつことが知られます。
花粉症や鼻炎の症状緩和、アトピー性皮膚炎の発症/予防など、乳酸菌の効果はこれまで多く報告されています。一時的な症状改善だけでなく、アレルギーになりにくい体質づくりについても有効性が明らかになっています。
プロバイオティクスというと、「ヨーグルト」を思い浮かべる人も多いと思いますが、ヨーグルトそのものが花粉症他アレルギーに良いというわけではなく、あくまでもそこにふくまれる菌がプラスに作用してくれるのです。
ヨーグルトをはじめとする乳製品は、アレルギーをもつ人にマイナス作用をしかねない、「カゼイン」の問題があります。また、発酵した乳製品には、ヒスタミンが多くふくまれるので、花粉症などのアレルギー症状が発生しているときには、排除すべき食品といえます。こうしたことから、プロバイオティクスはサプリメントで摂取することがすすめられますが、いくつかの菌株が花粉症に関連して研究されています。
- ラクトバチルス アシドフィルスは、鼻づまり、かゆみ、くしゃみなどの花粉症の症状を軽減します。
- ラクトバチルス ラムノサス GGで、乳児の花粉症の発症を予防する可能性が示されています。
- ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・カゼイなどの他の菌株も、花粉症の症状を軽減する可能性を示しています。
プロバイオティクスのサプリメントはさまざまなものが出回っていますが、なるべく多くの菌株/菌種をふくむものを選ぶようにするといいでしょう。また、アレルギー対策のためには、1日500憶個(CFU)以上とることがすすめられています。
ダイジェスティブ・エンザイム(消化酵素サプリ)
消化酵素サプリは、摂取量や摂取法によって食事の完全消化を目指すためだけではなく、炎症の軽減、さまざまな疾患の改善にやくだてることが可能です。
消化のための摂取は食事前にとりますが、それとは別に食事と食事のあいだや寝る前の空腹時に、高力価のプロテアーゼを多量摂取することで、花粉症をはじめとするアレルギー疾患の改善に働いてくれます。
※酵素セラピーに関しては、動画をご視聴ください。
まとめ
- 近年、複数の花粉に反応するばかりか、花粉症と通年性アレルギー性疾患の両方に悩まされている人が増えている。
- 免疫系の暴走を予防し、辛い症状から開放されるためには、アレルゲンとの接触を極力さけるとともに、症状を予防または軽減するための食生活をふくむライフスタイルの改善やサプリメントをうまく活用することが大切。
- ストレスケアは、思考・行動・栄養の3方向からのアプローチを考える。
- 食事のポイントとしては:
1) 抗炎症食を基本とする。
2) 良質タンパク質を毎食しっかり食べる。
3) ヒスタミンがふくまれる食品/飲み物は、控える。
4) 交差反応をおこす食品は、避ける。
5) その他
・ケルセチンが多くふくまれる食品を積極的に食べる。
・ハーブ類(スパイス含む)をうまく使う。
・完全消化を目指す。 - サプリメントは、免疫調節に働くものほか、抗ヒスタミン、抗ロイコトリエン、抗炎症、抗酸化に働くものを、うまく活用する。
花粉症をはじめとするアレルギー性疾患は、ストレスケアに気をつかいつつ、現在の自分のライフスタイル、食生活、精神状態を変えようという気になりさえすれば、抑制することが可能です。セルフケアの大切さを認識し、一日も早く、オプティマルヘルスを目指してください。
あなたが、最高の健康を手にいれ、いつもハッピーで、ありますように...。