
米国連邦政府が策定する「米国人のための新食事ガイドライン(2025~2030年)」が、2026年1月に発表されました。これは法律に基づき5年に1度改訂されているもので、栄養や健康に関する国の基本的な指針となっています。
今回の改訂は、「Make America Healthy Again(再びアメリカを健康に)」を実現するための基盤として、従来の「低脂肪・高炭水化物」を中心とした栄養政策から、大きく方向転換した内容として注目されています。
その根底にあるのが、「Eat Real Food(本当の食べ物を食べよう)」という、非常にシンプルなメッセージです。
本記事では、この新しいガイドラインの特徴を整理するとともに、ストレスニュートリションの視点から、その意味を読み解いていきたいと思います。
- ストレス栄養学の基本原則と今回のガイドライン
- 「加工食品の削減」と「本物の食べ物(Real Food)」
- タンパク質摂取の重視(フードピラミッドの逆転)
- 穀物の格下げと低炭水化物の登場
- 「脂質恐怖症」の終焉と全脂乳製品の容認
- ガイドラインと個別栄養の違い
- おわりに
ストレス栄養学の基本原則と今回のガイドライン
ストレスニュートリション(ストレス栄養学)では、栄養素の摂取量だけでなく、それが体内でどのように利用されるかを重視します。
そのため、
・必要な栄養素をきちんと摂取すること
・それを消化・吸収できる状態にあること
・炎症や活性酸素対策をしっかりとること
・体内に不要なものをため込まないこと
という視点から、食事や生活習慣を捉えます。
今回の米国の新しいガイドラインは、「本物の食べ物を選ぶ」「加工食品を減らす」「タンパク質を重視する」他、多くの点において、結果的にストレスニュートリションの考え方に近づいた内容といえます。
つまり、今回の改訂は単なる数値の変更ではなく、食事の考え方そのものが転換しつつあることを示していると捉えることができます。
「加工食品の削減」と「本物の食べ物(Real Food)」

新ガイドラインが掲げる、「Eat Real Food(本物の食べ物を食べよう)」というメッセージは、ホリスティック栄養学/ストレスニュートリションの基本原則である、「細胞に必要な栄養素を確保し、オプティマルヘルスを目指す」という考え方と重なります。
今回の改訂では、高度に加工された食品を減らし、できるだけ自然な形に近い食物を選ぶことが、これまで以上に強調されました。
「加工されていないWhole Food」を基本に
新ガイドラインでは、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な「加工度の低い食品(Whole Food)」を中心とした食事が推奨されています。
これは、単にカロリーや三大栄養素の比率を整えるという発想から、食物そのものの質を重視する方向へ転換したことを意味します。
ストレスニュートリションでも、細胞レベルで栄養素が働くために、できるだけ自然な形に近い食物を選ぶことが重要であると考えています。
「超加工食品」を減らす意味
新ガイドラインでは、精製炭水化物、不健康な脂質、過剰な塩分や糖分、さらには、化学添加物を多くふくむ「超加工食品」を大幅に減らすことを求めています。
これらの食品は、
・血糖値の乱高下
・慢性的な炎症
・腸内環境の悪化
・栄養密度の低下
といった問題と深く関係し、慢性疾患の根本原因とする専門家の見解を反映しています。
加工食品を減らすという方針は、慢性疾患の背景にある食生活そのものを見直そうとする姿勢ともいえるでしょう。
「糖を加えない」という明確なメッセージ

新ガイドラインでは、砂糖や異性化糖(果糖ブドウ糖液糖・ブドウ糖果糖液糖)など、「あとから加えられた糖」を避けることが推奨されています。
果物や乳製品に含まれる自然由来の糖は許容されますが、菓子類や清涼飲料水などにふくまれる添加糖は、明確に制限の対象とされています。
これは、高血糖・低血糖のくり返しや慢性炎症を防ぎ、身体の恒常性(ホメオスタシス)を保つという点で、ストレスニュートリションの考え方とも一致します。
なお、新ガイドラインでは、乳児期および幼少期には添加糖を避けること、5歳から10歳までの子どもについても、「糖を加えた食品・飲料品はいかなる量も推奨されない」と明記されています。
タンパク質摂取の重視(フードピラミッドの逆転)

新ガイドラインでは、タンパク質の重要性が、これまでになく強調されています。
・植物性信仰/低脂肪信仰から転換し、肉・魚・卵などの動物性タンパク質を重視
・成人のタンパク質摂取目標は、体重1kgあたり1.2〜1.6gへひき上げ
・改定されたフードピラミッドでは、タンパク質最上位に位置づけられ、毎食の摂取を推奨
こうした方向転換は、ストレスニュートリションが推奨する「タンパク質+ビタミン・ミネラル」を重視した食事に近づいた、重要な転換といえるでしょう。
なお、この摂取目標量は、従来の最低推奨量(体重1kgあたり約0.8g)と比べると、約50〜100%ひき上げられたことになります。
タンパク質の必要量は、個人個人の状況(体型・体質・行動/運動量・ストレス度ほか)によって異なりますので、すべての国民がガイドラインの範囲内のタンパク質摂取をすべきとはいえません。しかし、ストレスフルな現代社会では、タンパク質需要が大幅に高まることは確かです。
「量」だけでなく「質」が重要
タンパク質は、「量」だけでなく、「質」が重要です。
質の悪いタンパク源を増やせば、健康レベルの向上に貢献するどころか、炎症をひき起こす原因にもなります。
今回はじめて、毎回の食事ごとに「質が高く、栄養価の高い」タンパク質を重視することが推奨されました。
動物性タンパク質の位置づけ
新しいガイドラインでは、卵・鶏肉・魚介類・赤身肉といった動物由来の食材が推奨されています。
これに対して疑問を投げかける専門家もいますが、ヒトが動物である以上、効率よくアミノ酸を確保するという点では、動物性タンパク質は合理的であると、ストレスニュートリションでは考えます。
ただし、飼育環境、飼料、抗生物質やホルモンの使用、加工工程などへの考慮が不可欠です。ガイドラインでは、そこまでは触れていないため、各自が適切な選択をする必要があります。
なお、動物性タンパク質だけでは不足するアミノ酸もあるため、植物性タンパク質と組み合わせて摂ることが推奨されています。
その点も今回のガイドラインでは網羅されており、ストレスニュートリション的にも評価できます。
ストレス下での消化吸収の問題
一方、ストレス時には消化吸収力が低下することが多く、未消化タンパク質による腸内環境の悪化など、健康レベルの低下を招くこともあります。
こうしたことを避けるため、どのようなタンパク質食品を、どのように食べるか、あるいは消化力改善のための工夫などは、個々の状態にあわせた対応が必要です。
こうした点は、国民全体を対象としたガイドラインではカバーできない部分であり、ここにこそ、ストレスニュートリションの役割があるといえるでしょう。
⇒タンパク質について詳しくは【体がぐんぐん若返るタンパク質パワー】(E-book講座 [無料])
穀物の格下げと低炭水化物の登場

今回のガイドライン改訂では、これまでフードピラミッドの土台であった穀物(精製炭水化物)が、タンパク質と置きかわる形で、優先順位が逆転しました。
従来のフードピラミッドは、パン・米・パスタ・シリアルなどを食事の中心に据えていましたが、今回の改訂では、その位置づけが大きく見直されています。
これは、血糖値の乱高下や慢性炎症といった問題が、精製炭水化物の過剰摂取と深く関係しているという認識が、ようやく政策レベルに反映されはじめた結果ともいえるでしょう。
全粒穀物を推奨への疑問
新ガイドラインでは、精製穀物を減らし、全粒穀物を選ぶことが推奨されています。
しかし、全粒穀物であっても、「糖質」であることに変わりはありません。血糖値が不安定な人や炎症が強い人にとっては、全粒穀物であっても健康レベルの低下の要因になることを、頭にいれておく必要があります。
単純に、「全粒穀物なら安心」ということではなく、自分の身体の状態に応じて、穀物の種類や摂取量を見直す必要があるでしょう。
はじめて「低炭水化物」が選択肢に
今回のガイドラインで注目すべき点は、「低炭水化物食(ローカーボ)」が、はじめて正式な選択肢として明記されたことです。
これは、長年「炭水化物中心」の食事が推奨されてきた流れの中では、大きな方向転換です。
ただ、ストレスニュートリションでは、「低糖質・低炭水化物」が誰にとっても最適であるという立場はとっていません。
慢性的なストレス状態では、
・糖新生への依存
・副腎への負担
・コルチゾール過剰、または低下
・睡眠の質の低下
・血糖値の不安定化
といった状態が起こりやすく、安易な低糖質食は、HPA軸(ストレスに対応するホルモンの調整システム)のバランスを崩す可能性もあるからです。
糖質の摂りすぎ(高糖質・高炭水化物)は、いかなる場合も避けるべきですが、低糖・低炭水化物食は、すべての人にあてはまる「万能な食事法」とはいえません。
ここでも重要なのは、ガイドラインをそのままあてはめるのではなく、自分の身体の状態を見極めたうえで選択する、という視点です。
「脂質恐怖症」の終焉と全脂乳製品の容認

新ガイドラインでは、はじめて砂糖を添加していない全脂乳製品(バターや全脂牛乳など)が健康的な選択肢として認められました。これは、従来の「低脂肪・無脂肪」推奨からの、大きな転換です。
ホリスティック栄養学やストレスニュートリションでは、脳の健康やホルモンの材料として、良質な脂質の重要性を長年重視してきました。
(※基本的に牛乳は控えるように指導しますが、摂取する場合は、低脂肪ではなく、全脂乳を選びます)
調理用油脂の変化
新しいガイドラインでは、「健康的な脂肪」を使った調理を推奨しており、オリーブオイル、バター、牛脂などが例示されています。これまで推奨されてきた「植物油(オリーブオイル、キャノーラ油、コーン油、大豆油、ひまわり油など)」の方針から変化がみられます。
ストレスニュートリションでは、植物油の製造工程や酸化の問題を考慮し、少量のバターやオリーブオイル(良質なバージンオイル)を選ぶこと勧めてきました。
この点でも、今回のガイドラインは、従来の栄養学的常識を見直す方向に一歩踏み出したものといえるでしょう。
飽和脂肪酸10%ルールとの矛盾

一方で、本物の食べものと全脂乳製品を推奨しながら、「飽和脂肪酸は総エネルギーの10%以内」という旧基準は維持されています。
そのため、全脂乳製品、バターや牛脂、さらに肉類をとりながら、同時に飽和脂肪酸を10%以内に抑えることは、現実的にはかなり難しい(ほぼ不可能)という指摘もあります。
この点については、ガイドライン自体が、まだ過渡期にあることを示しているともいえるでしょう。
脂質は「敵」ではなく、「重要な材料」
ストレスニュートリションの視点では、脂質は単なるエネルギー源ではなく、
・細胞膜の材料
・ホルモンの材料
・脳・神経系の材料
となる、非常に重要な栄養素です。
脂質を極端に避ける食事は、ホルモンバランスの乱れや、慢性的な疲労感、さらには精神面の不調にもつながる可能性があります。
「脂肪=悪」という考えかたから、「どの脂質を選ぶか」という視点への転換は、本質的な健康を考えるうえで、欠かせない変化といえるでしょう。
では、こうしたガイドラインを、私たちはどのように受けとめればよいのでしょうか?
ガイドラインと個別栄養の違い

ホリスティック栄養学/ストレスニュートリションは、「食事のバランス」というよりも、「細胞に必要な栄養素の確保」、「何を食べるか以上に、身体が何を吸収できるか」ということを重視します。
同じ食事をしていても、
・消化吸収力
・腸内環境
・ストレスレベル
・ホルモンバランス
・炎症の有無
などによって、身体への影響は大きく異なります。
そのため、「あなたの身体に必要なビタミン&ミネラル プロファイル」や「ストレスレベル・チェックシート」、さらには、毛髪ミネラル検査や血液検査などを用いて、不足している栄養素や体内バランスを把握し、必要に応じて食事内容の調整やサプリメントを活用することが重要です。
今回の新ガイドラインは、従来の栄養学から、より分子栄養学的・ストレスニュートリション的な方向へ、一歩踏みだした内容といえます。
とはいえ、政府が示すガイドラインは、あくまでも「国民全体に向けた最低限の基準」です。
そこに示されているのは、「病気にならないためのライン」であって、「もっとも高い健康レベルを目指すための方法」ではありません。
大切なのは、このガイドラインを土台(ベース)として活用しながら、あなたの体質やライフスタイル、ストレス状態にあわせて、オーダーメイドの栄養アプローチを構築していくことです。
ここにこそ、ホリスティック栄養学やストレスニュートリションの役割があります。
おわりに
今回の改訂では、これまでの「低脂肪・高炭水化物」中心の考え方から大きく転換し、「本物の食べ物」を基本とし、タンパク質重視、低脂肪から全脂肪へ、そして加工食品を減らすという方向へと、大きく舵をきりました。
その背景には、食事が慢性疾患や心身の不調と深く関わっているという認識が、ようやく政策レベルでも共有されはじめたことがあります。
一方で、ガイドラインはあくまでも、「国民全体に向けた最低限の基準」です。それをそのまま当てはめさえすれば、すべての人が健康になるというわけではありません。
本当に大切なのは、自分の身体の状態やストレスレベルを理解したうえで、日々の食事をふくめた生活全体のなかで、「何を、どのようにとり入れるか」を考えることです。
ストレスニュートリションは、ストレス応答/反応、食事・栄養・ホルモン・血糖をひとつの流れとして捉え、その人にあった整えかたを考えていく栄養学です。
この記事を読んで、「ガイドラインを知るだけでなく、自分にあった食事の考えかたをもう少し深く知りたい」と感じられたかたには、ストレスニュートリション入門講座【ストレスケアと食事法(全3回)】(後述)で、その基本をわかりやすくお伝えしています。ぜひ、ご活用ください。
このコラムが、ご自身の身体と向きあうきっかけとなり、より健やかな毎日につながれば幸いです。
ナターシャ・スタルヒン
(一社)日本ホリスティック代表理事
マスターストレスニュートリショニスト
通常¥33,000がクーポン利用で¥11,000♪
クーポンコード NM110
▼2026年1月に発表された米国の新食事ガイドライン全文の日本語翻訳版は下記からご確認いただけます▼
「米国人のための新食事ガイドライン(2025~2030年)」(全文翻訳)
この記事で触れなかった、アルコールやナトリウムの摂取、一日を通じて野菜や果物を食べることなどのほか、「特別な集団と考慮事項」のセクションでは、
・乳児期および幼児期(出生〜4歳)
・学童期(5〜10歳)
・青年期(11〜18歳)
・成人初期
・妊婦
・授乳中の女性
・高齢者
・慢性疾患を有する者
・ベジタリアンとピーガン
それぞれについてのガイドライン、食生活において気をつけるべきことなどを伝えていますので、ぜひ、目を通してみてくださいね。
