年齢を重ねるごとに気になってくる、「見た目の変化」と「身体の不調」。それって、 “身体の内側”から進む老化のサイン!
あなたから若さを奪いとる3大要因といえば、「酸化(サビ)」、「糖化(コゲ)」、そして「慢性炎症(くすぶり)」。今回は、「糖化」にフォーカスし、その正体と予防法をわかりやすく解説します。
- 体内老化は見えないところから進んでいる
- 「糖化」ってなに?老化を加速する目に見えない敵
- 自分の糖化度をチェックしよう
- 高血糖&血糖値の乱高下があなたの老化を進める
- 今日からできる!無理なくつづける糖化ケア
- 糖化を防ぐための栄養戦略とサプリメント活用法
- まとめ
体内老化は見えないところから進んでいる
見た目年齢と生物学的年齢の関係
同窓会などに出席すると、「あんな先生いたかしら?」と思ったら同級生だった!とか、逆に同じ年のはずなのに、「なんでそんなに若々しいの?」と驚いたりすることってありませんか?
実は、【見た目年齢(外見的年齢)】と【生物学的年齢(体内年齢)】は、密接に関連しています。 近年の研究では、見た目年齢がその人の体内の健康状態を反映する可能性が高いことが示されていて、「老化のバイオマーカー(生物指標)」として有効であるという考えかたも登場しています。
南デンマーク大学のコーア・クリステンセン教授らが、英専門誌「British medical journal」で発表した研究結果によると、1,826人の双子のうち、老けて見られた人たちは、7年後の死亡率(女性の場合)がそうでなかった人たちの1.9倍も高いことが判明!「見た目年齢は、生存状況とかなり関係している」と、結論づけました。
また、オランダ・エラスムス大学の研究チームがおこなった2020年の研究では、「若く見える人ほど、認知機能や心血管の状態が良好である傾向がある」という結果がでています。
見た目の若さは、単なる美容の話ではなく、健康状態そのもののあらわれでもあるのですね。これは、少し考えれば、当然のこと。身体の外側にあらわれることは、すべて体内でおこっていることの反映ですから、見た目が老けている=体内が老化している=寿命が短い、という図式がなりたつわけです。
実年齢より体内年齢が高い人の特徴
「まだ若いから大丈夫」と思っていても、知らず知らずのうちに身体の内部、細胞レベルでは老化が進行しています!特に、こんな習慣がある人は要注意!!
- 甘いものや炭水化物が大好きで、食事のたびにしっかり食べる
- タンパク質食品をあまり食べていない
- 運動不足気味
- ストレスが多く、寝つきが悪い。睡眠時間も短い
- 外食・加工食品が多く、栄養バランスが、かたよっている
- 健康診断は「面倒くさい」と、あとまわし
これらはすべて、老化の3大要因である、“糖化”、“酸化”、“慢性炎症”をすすめてしまいます。肌の老化や内臓の機能低下など、老け見えにも、体調不良にも深くかかわっています。
今回のテーマは、“糖化”ですから、まずは、ライフスタイルから、あなたの身体の糖化度を簡単にチェックしてみましょう。
あなたは大丈夫?セルフチェック
あてはまる項目にチェックをいれてみましょう。
さて、いくつチェックがつきましたか?
3つ以上にチェックがついたあなたは、要注意!あてはまった項目が多いほど、糖化が進んでいる可能性が!!
でも、ご安心を!これからお話しする「糖化のメカニズム」と「予防法」をマスターすれば、今日からでも身体のなかから、細胞から若返ることができるのです!
「糖化」ってなに?老化を加速する目に見えない敵
“コゲ”が老化を進める?糖化のメカニズムとは
私たちの身体のなかで老化をジワジワと進める“見えない敵”――それが、「糖化」です。
糖化とは、血液中にあまったブドウ糖などの糖が、タンパク質と結びつく反応のこと。これにより、AGEs(Advanced Glycation End-products:終末糖化産物)という厄介な老化物質が生みだされます。AGEsの生成は、体中を老化させ、さまざまな疾病にも結びついていく、ありがたくない現象です。
この現象は、実は私たちが日常でよく見る“あの光景”と同じ。
たとえば、パンをトーストすると表面がこんがり茶色になりますよね? それは、材料にふくまれる糖とタンパク質が結びついて褐変反応をおこす「メイラー
ド反応」によるもの。そして、私たちの体内でも、似たような“コゲつき”が静かに進行しているのです。
AGEsはコラーゲンやエラスチンなどの構造タンパクを変性させ、肌の弾力を失わせたり、関節軟骨が硬くなったり、血管をもろくしたりと、全身の老化をひきおこします。
老化だけじゃない、AGEsの本当の怖さ
AGEsの蓄積は、肌のシワ・タルミといった見た目の変化にとどまりません。以下のような疾患とも深い関連があることがわかっています。
- 動脈硬化、高血圧、心臓病
- 糖尿病とその合併症(腎症・網膜症など)
- アルツハイマー型認知症
- 骨粗しょう症、関節炎
- 白内障、黄斑変性症
つまり、AGEsは「老け見え」だけでなく、命にかかわる病気のひき金にもなる物質なのです。
さらに厄介なのは、AGEsが酸化ストレスや炎症を増大させること。つまり、「糖化」、「酸化」と「慢性炎症」のトリプルパンチで、互いに悪影響をおよぼしあいながら、身体の老化や機能低下を加速させていくのです。
一度できたAGEsは、戻せないの?
酸化によるサビは、ビタミンCやE、水素などの抗酸化物質でとり除くことができます。でも、糖化によるコゲは除去できません。
AGEsのもっとも厄介な点は、いったんできてしまうと体外に排出されにくく、蓄積しつづけるということなのです。「糖化=不可逆(元に戻らない)な現象」といわれるのは、このためです。
世界中の研究者たちは、老化の大きな原因であるAGEsの抑制・除去に挑みつづけています。最近の注目トピックをみると、
◆ 細胞の再プログラミング(2025年・米国): 老化した細胞を若返らせる技術で、糖化によるダメージを修復できる可能性があると注目されています。
◆ NAD+補充療法: 細胞のエネルギー代謝と修復機能を高める補助因子NAD+を補充することで、老化に伴う機能低下を改善する研究が進んでいます。
◆ 老化細胞除去薬(セノリティクス): 体内に溜まった老化細胞をとりのぞくことで、AGEsの蓄積がもたらす悪影響を軽減できる可能性が…。動物実験のエビデンスは多く、ヒトでの臨床研究も進行中。
これらは、まだ人間に対する本格的な応用にはいたっていないものの、「老化は止められない」という常識が塗りかえられつつあるのかもしれません。
とはいえ、2025年現在、AGEsを完全に分解・除去する確実な治療法は、残念ながら見つかっていません。つまり、「糖化を防ぐ」ことこそが、唯一にして最強の対抗策なのです。
自分の糖化度をチェックしよう
「体内年齢」を数値で知る時代へ
糖化は“気づかないうちに進む老化”です。そう聞くと、「自分の体内で、どれくらい糖化がすすんでいるんだろう?」と不安になりますよね。
糖化は目に見えない現象ですが、AGEs測定器をつかえば、体内年齢を数値で確認することができます。でも、測定器がなくても、特定の数値を参考にすることで、自分の体内の糖化度を客観的に把握することは可能です。
そのカギとなる指標が、グルコヘモグロビンA1C(HbA1c)。これは、過去約2〜3か月間の平均血糖値を反映した数値で、健康診断などの血液検査で、【HbA1c】と表示されます。
もともとは、糖尿病の診断につかわれる指標ですが、実は、この数値こそ、あなたの「血糖コントロール力」や「糖化の進行度」を可視化しているものなのです。
つまり、HbA1cは、あなたの「体内年齢」を知る重要なバロメーターでもあるのです。
HbA1cが示す“糖化レベル”とは?
HbA1cは、赤血球中のヘモグロビン(タンパク質)がブドウ糖と結びついた割合を示しているものです。
血液中に糖が多ければ多いほど、ヘモグロビンの糖化も進み、HbA1cの数値は高くなります。
通常、健康な人でも4.0〜4.8%程度のヘモグロビンは糖化しているといわれ、これは生理的(自然な)糖化です。
しかし――
- 5.0%をこえると、「体内で余分な糖が目立っている」サイン
- 5.6%をこえると、糖尿病予備軍
- 6.5%以上は、糖尿病と診断される基準
健康診断などでは「6.0%未満であれば問題なし」とされることも多いですが、「問題なしだから安心」、「正常値だから安心」とは、いいきれません。
実際、HbA1cは、1%上がるごとに、心臓発作・ガン・脳血管疾患のリスクが大幅に上昇するという研究もあります。だからこそ、 “正常の中でも、どこに位置しているか”に注目しましょう。
目安として、HbA1cが5.0%以下であれば、あなたの老化スピードは実年齢どおり。5.0%を超えているなら、あなたの体内老化が加速している可能性が…!
糖化ケアの視点からも、HbA1cは5.0%以下を目指したいものです。
HbA1cだけでは見えない“血糖の変動”も見逃すな
HbA1cは、健康診断などで定期的にチェックすることが重要です。前年との変化に敏感になることが、糖化の進行をおさえる大事なステップです。
ただ、HbA1cはあくまでも中長期の平均値血糖値を示すもの。血糖値の急上昇・急降下(スパイク)といった瞬間的な変動は反映されません。
たとえば、HbA1cが4.8%でも、食後に血糖値が180mg/dLをこえていたら、それだけで糖化が進むリスクになります。
そのため、HbA1cに加えて「空腹時血糖値」と「食後血糖値」もセットでチェックするのが理想的。これらをあわせてみることで、あなたの本当の血糖コントロール力や糖化リスクを、より正確に把握することができるのです。
高血糖&血糖値の乱高下があなたの老化を進める
高血糖とは何か?――現代人に潜む“静かな脅威”
血糖値とは、血液中にふくまれるブドウ糖の濃度のこと。 私たちの身体は、エネルギー源として血液中の糖を必要とするため、血糖は、ある一定の範囲に維持されていなければなりません。血糖は、高すぎても低すぎても、体調を崩す原因になります。
特に、血糖値が慢性的に高い「高血糖」状態がつづくと、体内では糖化反応が進み、AGEsの蓄積が加速。肌はくすみ、身体の組織はかたくなり、見た目も機能も老化していきます。つまり、高血糖を防ぐことは、糖化を防ぐ=老化を防ぐ近道なのです。
現代人は、加工食品・高糖質食・運動不足、ストレスなど、知らず知らずのうちに高血糖リスクを抱えています。 しかも、軽度の高血糖は自覚症状がないため、気づかないうちに身体を蝕んでいるのです。
高血糖がひきおこす3つのダメージと“老化”リスク
高血糖がつづくと、体内では、次の3つの悪循環が進行します。
✅ 糖化(AGEs生成)
あまった糖がタンパク質と結びつき、組織を劣化させる。
✅ 酸化(フリーラジカル増加)
活性酸素が増え、細胞を傷つけ、老化や様々な疾病のリスクを高める。
✅ 炎症(慢性炎症の促進)
血糖値の乱れは、体内で微細な炎症を慢性的に継続させ、全身の機能低下を招く
血管、肌、脳、骨など、身体中のあらゆる組織がダメージをうけ、老化と病気の土台ができあがってしまいます。
◆ 血管: AGEsによる内皮機能障害 → 動脈硬化・高血圧
◆ 肌: コラーゲン糖化 → ハリ・弾力の低下、しわ・たるみ
◆ 脳: 神経細胞の糖化 → 認知機能低下、アルツハイマー病リスク増大
◆ 骨・筋肉: 組織の脆弱化 → 骨粗しょう症、サルコペニア
高血糖は、単なる「血液の問題」ではありません。全身の老化スイッチを押してしまう存在なのです。
理想的な血糖値とは?――身体を老けさせない基準
糖化を防ぐには、まずは、自分の血糖値の状況を把握することからスタート。
「医者から高血糖なんて指摘されたことないし、自分には関係ない。ピンとこない」と思っていませんか?
通常の健診診断では、空腹時の血糖値は110mg/dl未満なら「正常」とされ、問題視されないことが多いのです。でも、理想は85mg/dl以下。それを越えると、糖化や心疾患リスクが急上昇することが知られているのです!
しかも、健康診断では空腹時血糖値しか測りません。空腹時血糖値が理想の範囲内であっても、食後の血糖値の上昇と下がりかたも重要なのです。
最近では、腕に小さなセンサーを貼るだけで、血糖変動を24時間リアルタイムでモニターできる「フリースタイル リブレ」なども普及してきました。糖化を防ぐためにも、こうしたツールを活用してみるのもおすすめです。
目指すべき血糖値の目安は:
・ 空腹時血糖値: 70〜85 mg/dL
・ 食後血糖値(食後2時間): 空腹時+40mg/dL以内(目安125mg/dL程度)
この範囲を維持することが、体内糖化と老化を防ぐカギです。
インスリンの乱れが「老化スイッチ」を押す
血糖値の調整を担っているのが、「インスリン」というホルモンです。食事で血糖値が上がると、インスリンが分泌され、血中のブドウ糖は細胞にとり込まれてエネルギーとして使われます。これにより、血糖値は下がります。
ところが――
糖質過多の食生活をつづけていると、インスリンが過剰分泌されつづけます。その結果、「インスリン抵抗性(効きにくくなる状態)」が生まれ、糖が血液中にあふれてきます(すなわち、血糖値が下がりにくくなる)。血糖値が高止まりすれば、糖化はどんどん進み、肌も血管も内臓も深刻なダメージをうけるようになるのです。
インスリン抵抗性は、老化のアクセルを踏みっぱなしにする状態ともいえます。
血糖値の乱高下(血糖スパイク)は最大のストレス
慢性的な高血糖とならんで最近注目されているのが、「血糖スパイク」です。血糖スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象です。
健康な人でも、食事をすると一時的に血糖値は上昇しますが、2時間程度かけて、ゆるやかに下がってきます。
ところが、白米やパン、スイーツ、清涼飲料水など、糖が多くふくまれる食品を食べると、血糖値は一気にはね上がります。するとインスリンが大量に分泌され、今度は血糖値が急激に下がりすぎてしまう――これが血糖スパイクのメカニズムです。
この急激な変動がもたらすリスクは深刻です。
・ 血管内皮細胞が短時間で傷つき、AGEsの生成が促進
・ イライラ、疲労感、集中力低下など、メンタル面にも悪影響
・ スパイクをくり返すうちに、インスリン抵抗性が進行 → 慢性高血糖へ
「高血糖」も「血糖値スパイク」も、どちらも老化を加速させる要因――だからこそ、今この瞬間から、血糖との上手なつきあいをはじめましょう。
今日からできる!無理なくつづける糖化ケア
AGEsは、いったん身体に蓄積すると、簡単には分解・排出できない“しぶとい老化物質”です。でも、心配はいりません。正しい生活習慣を身につければ、AGEsの増加を防ぎ、老化スピードをぐっと遅らせることが可能です。
なによりも重要な血糖コントロール
糖化ケアの基本は、血糖値を安定させること。特に、血糖値の乱高下(スパイク)は、体内に強いストレスをもたらし、糖化を加速させる要因となります!
血糖コントロールには、
・糖質の摂取量を適切にする
・GI値&GL値の低い食品を選ぶ
・コルチゾールの概日リズムにあわせて食事タイミングと内容を工夫する
・食べる順番を意識する
・ゆっくり、よく噛んで食べる
・サプリメントをうまく活用する
・食後に軽い運動をする
など、さまざまな工夫が効果的です。
具体的な血糖コントロール法については、これまでの記事でくわしく紹介していますので、ぜひ参考にしてください!
🔗糖質の摂り方をみなおして、スリムな健康ボディに!
🔗低GI・低GLを意識しよう!
🔗朝食はタンパク質と果物を
調理法の工夫で、AGEsをカット!
AGEs は、食品の高温・乾燥調理によって多く生成されます。特に、オーブン・直火焼き・フライパン・揚げ物での高温調理などはAGEsの温床。ジャンクフードとよばれるほとんどの食品がこれにあてはまりますから、なるべく食べないようにしたいですね。
逆に、蒸す・煮る・茹でるといった低温・湿潤調理を心がければ、AGEs生成を大幅に減らすことが可能です。
調理法によってAGEsの生成量がどれくらい違うのか、いくつか例をあげておきましょう。
・牛肉(100gあたり): 茹でると1,538 KU、直火焼きだと11,270 KU
・サーモン(100gあたり): 茹でると1,082 KU、直火焼きだと3,347 KU
・卵(100gあたり): ポーチドだと90 KU、目玉焼きだと2,749 KU.
と、驚くほどの差があります。
また、マリネやスパイスの使用もAGEsの生成の抑制に有効です。
「調理法が、“体内の老化スピード”を変える!」――この意識をぜひ、もちましょう。
抗酸化物質でAGEsの発生をブロック
AGEsは、糖化だけでなく酸化ストレスによっても促進されます。そのため、抗酸化物質/栄養素を積極的にとりいれることが大切です。
ビタミンCやE、カテキン、ポリフェノール、カロテノイド類などは、糖化反応の初期段階に介入し、AGEsの発生をおさえる働きがあります。
緑茶やベリー類、高カカオ製品(70%以上のチョコなど)、トマトやホウレン草など、抗酸化力の高い食品を日常的にとりいれましょう。
運動と睡眠でAGEsの蓄積を防ぐ
近年の研究では、適度な有酸素運動がAGEsの血中濃度を減らし、良質な睡眠が、糖代謝と酸化ストレスを改善、AGEsの蓄積を抑制することがわかっています。
特に深いノンレム睡眠中に分泌される成長ホルモンは、組織の修復や代謝調整をサポートし、糖化ストレスの軽減にも役立ちます。
睡眠改善はなかなか一朝一夕にはいきませんが、生活リズムや環境を整える工夫は確実に効果を発揮します。
🔗睡眠の質を上げるための習慣、環境、食事、そしてストレスケア
体脂肪にも注意――「太ること=糖化が進むこと」
年齢とともに太りやすくなるのは自然な現象ですが、内臓脂肪の増加は要注意。
内臓脂肪が増えると、脂肪細胞からアディポサイトカインと呼ばれる炎症性物質(いわゆる“悪玉ホルモン”)が分泌され、インスリン抵抗性を悪化させ、血糖値を乱しやすくします。
結果として、
・ 血糖コントロールが悪化
・ AGE生成が加速
・ 老化や生活習慣病リスクが上昇
という悪循環に陥るリスクが高まります。
無理なダイエットはおすすめしませんが、糖化ケアをベースにした食習慣と運動を心がけることで、自然に脂肪を落とし、健康的な身体づくりが可能になります。
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糖化を防ぐための基本は、血糖コントロール・調理法・抗酸化物質・運動・睡眠。これらを無理なく、自分のペースでとり入れていけば、AGEsの蓄積は確実に遅らせることができます。
今日からできることから、さっそくはじめましょう!
糖化を防ぐための栄養戦略とサプリメント活用法
糖化ケアを本気で考えるなら、単に抗酸化物質をとるだけでは不十分です。血糖管理、炎症制御、代謝サポート、排出機能の強化──これらを栄養素の力で多角的に支えることが、AGEsをおさえ、老化スピードを緩やかにするカギとなります。
食事で確保しにくい栄養素は、サプリメントでサポートを
現代の食生活では、AGEs生成に関与するリスクを下げるために不可欠なビタミンB群やマグネシウム、亜鉛などのミネラルが不足しがちです。これらは糖代謝を支える補酵素として働き、さらにAGEsの前駆物質であるカルボニル化合物の処理にも重要な役割をはたします。
・マグネシウム: インスリン感受性の向上 ⇒ 血糖の安定化
・亜鉛: 酵素の補因子として糖代謝・抗酸化に関与
・ビタミンB群(特にB1、B6): 糖代謝の補酵素、グルコースの代謝促進
・水溶性食物繊維(アップルペクチンなど): 血糖急上昇を抑制し、腸内環境も改善
これらの栄養素を十分に食品から確保するのは難しいため、必要に応じてサプリメントで補うことが、糖化リスクを低減するための重要な土台となります。
糖代謝をサポートする“代謝系サポート栄養素”の活用
AGEsを根本的に抑制していくには、血糖コントロールが不可欠です。クロムやシナモン抽出物、ベルベリンなどの成分は、インスリン感受性を高め、血糖値の過剰な上昇を防ぐ作用があります。血糖コントロールは、そのまま抗糖化につながります。
・クロム: 血糖急上昇をマイルドにおさえて、間接的にAGEs生成を防ぐ
・シナモン抽出物: 血糖値コントロールと抗酸化作用のダブル効果で糖化を二重でブロック。
・ベルベリン: AMPK活性化による強力な血糖値低下作用で、AGEs生成をしっかり抑制。炎症抑制もあり。
・αリポ酸: 糖代謝促進と抗酸化の両面からAGEs生成を抑制できるため、代謝系サポートの中心的な存在。
血糖値の安定は、そのまま抗糖化に直結します。こうした代謝系サポート栄養素の活用は、糖化リスクを大きく下げるための実践的な手段です。
腸内環境をととのえて糖化ストレスをコントロール
腸内環境は、AGEsの排出や炎症の制御にも深くかかわっています。特に、腸内細菌がつくりだす短鎖脂肪酸には、炎症やインスリン抵抗性の抑制効果があり、結果として糖化リスクの低下にもつながります。
日々の食事に加え、プレバイオティクス(オリゴ糖、イヌリン)やプロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌)などのサプリメントを活用することで、効率的に腸内環境を整えることができます。
糖化ケアとしてプロバイオティクスを活用する場合、菌の量(CPU)よりも、菌種と定着力を重視したほうが、効果的です。
糖化ケアのための菌量としては、100~300億(10~30 billion)CPUくらいで十分。菌の種類としては、ビフィズス菌、乳酸菌をメインに、酪酸産生菌などをバランスよく、朝食前~軽い朝食後に水かぬるま湯で飲むようにします。
腸からはじまる糖化ケアを意識して、身体の内側から若々しさをサポートしましょう。
積極的にAGEsを減らす方向で働く強い味方
近年では、AGEsの生成や蓄積そのものに働きかける機能性成分への注目が高まっています。たとえば、αリポ酸やL-カルノシンは、AGEsの前駆物質である活性カルボニルを中和し、糖化反応の進行を抑制することが知られています。
さらに、“セノリティクス”と呼ばれる成分群──フィセチン(fisetin)やレスベラトロール、ケルセチン、クルクミン、EGCG(緑茶ポリフェノール)など──は、老化細胞(SASP細胞)の除去あるいは活性低下を通じて、糖化が引きおこす慢性炎症の鎮静化に寄与するとされています。
実際、「老化細胞除去薬(セノリティクス)」の研究成果を応用したサプリメントも登場していて、「セノリティック・アクティベーター」などの名称で複数社から販売されています。なかでも、Life Extension社の「Senolytic Activator」は、科学的根拠にもとづいた配合が評価されており、1週間に1回(3カプセル)の摂取というユニークな使用法も特徴的です。
AGEs対策を本格的に強化したい人にとって、こうした機能性サプリメントは、特におすすめです。
まとめ
- 見た目年齢と生物学的年齢(体内年齢)は密接に関連しており、「老け見え」は身体のなかでおきている変化のサインでもある
- 老化の一因である「糖化」は、体内であまった糖がタンパク質と結びつくことによっておき、AGEs(終末糖化産物)という老化物質が生成される
- 肥満やインスリンの働きの低下は、血糖値の乱高下をひきおこし、糖化を加速させる原因となる
- HbA1cは、体内の糖化度を推測できる指標の一つだが、それだけでなく空腹時血糖値や食後血糖値もあわせて管理することが大切
- 糖化を防ぐためには、食べ方・運動・調理法・ストレス対策など、生活習慣全体を見直すことが重要であり、小さな改善が将来の健康と若さにつながる
- 糖化対策の基本は、血糖コントロール・調理法・抗酸化物質・運動・睡眠。これらを無理なく、自分のペースでとり入れていくことで、AGEsの蓄積は確実に遅らせることが可能
- 食事で確保できない栄養素は、サプリメントを活用。一般的に不足しやすい栄養素に加え、糖代謝や腸内環境サポート、さらに、AGEsの生成や蓄積防止に直接働きかける機能成分などがふくまれるサプリメントを複合的に選択
「老化」は避けられませんが、「どう老いるか」は、あなた自身で選ぶことができます。
正しい知識も身につけ、日々の暮らしをほんの少し整えるだけで、あなたの身体は確実に応えてくれますよ!
(一社)日本ホリスティックニュートリション協会
ナターシャ・スタルヒン