「リラクセーション」は、リラックス反応(副交感神経が優位になる)を誘導し、ストレスホルモン(コルチゾール)の最適化を図ります。それにより、ストレス反応を低減させ、ホメオスタシスをとり戻し、心身の回復機能、自然治癒力が向上されていきます。
さまざまなリラクセーション法が存在しますが、全般的なリラクセーションの効果とともに、簡単に実践できる、いくつかのリラクセーション法を見ていきましょう。
- ストレスレジリエンスを高めるリラクセーション
- リラクセーション法の効果
- リラックス反応を即刻よびおこす--腹式呼吸
- 心身ともに深くリラックス--漸進的筋弛緩法
- お風呂でゆっくり、リラクセーション--入浴&温泉療法
- そこにいるだけで癒されていく--森林浴
- 即効性の効果も期待できる--ボディワーク
- 大脳辺縁系に直接働きかけて即効--アロマテラピー
- 深いリラクセーション効果でストレスリセット—瞑想
- まとめ
ストレスレジリエンスを高めるリラクセーション
ボディ、マインド、そしてスピリットの平静およびホメオスタシスをとり戻すため、さまざまなリラクセーション法が、古来より多くの文化圏で実施されてきました。
呼吸法のように数分で実践可能なもの、90分以上かかるマッサージなどのような手技、一度で即効性があるもの、継続することで効果を実感するもの、また、セルフケアとして自らおこなうもの、セラピストなどの専門家の手に委ねなければならないものなど、さまざまなリラックセーション法が存在します。
リラクセーションは、ストレス反応の軽減において即効性があるばかりでなく、つづけることで心身の自律機能が回復し、心が折れにくい、ストレス反応がおきにくい体、すなわち、ストレスレジリエンスを高めることができるとされます。
「一番おすすめのリラクセーション法は何ですか?」という質問をよくうけます。でも、どのリラクセーション法が最適かは個人個人の状況によってかわります。
いくつかのリラクセーション法を自分の選択肢としてもち、状況に応じてつかいこなせるようになるといいですね。ストレスを強く感じているときのみならず、普段から交感神経の緊張をゆるめ、リラックス反応をよびおこすことが可能になります。
リラクセーション法の効果
リラクセーション法によっても、それを実践する人によっても、効果のあらわれかたは違いますが、共通する効果をいくつかあげてみましょう。
・ストレスホルモンの悪影響の軽減(ストレスホルモンレベルを下げる)
・休養時の心拍数や血圧をさげる
・気分の落ちこみを和らげる
・筋肉のハリやコリを減らす
・消化力を改善する
・睡眠の質をあげる
・免疫機能をあげる
・集中力、注意力の向上/幸福感の向上 ほか。
自分にあったリラクセーション法をおこなっていくことで、こうした効果を実感できるようになります。
多くの人にとって効果的、かつ簡単なリラクセーション法のいくつかをご紹介しましょう。
なお、それぞれのリラクセーション法についての詳しい実践法などは、個々に記事を書いていきますので、ここでは、簡単に触れる程度にしておきます。
リラックス反応を即刻よびおこす--腹式呼吸
「息」という漢字は、「自」からの「心」と書きます。呼吸は、心の状態と深く関わっている、ということです。
呼吸は、緊張状態のときに働く交感神経と、リラックス状態のときに働く副交感神経を切りかえるスイッチとしても作用します。緊張しているときに大きく深呼吸を1~2回するだけでも気持ちは落ちつくのを、あなたも経験しているでしょう。呼吸は唯一、私たちが意識してコントロールすることができる生命の営みです。
ゆっくり息を吸いながらお腹を膨らませていく腹式呼吸は、副交感神経(リラックスする神経)の活動を賦活させる効果があることが医学的に確認されています。なお、胸郭をひろげる「胸式呼吸」は、リラックス効果と反対で、交感神経を刺激し、活力アップの作用があります。
ヨガや気功、太極拳、瞑想をはじめとするリラクセーション法のほとんどが、この腹式の呼吸法をとりいれています(ピラティスは、「胸式呼吸」)。腹式呼吸はストレス時に低下するセロトニン(幸福ホルモンとも呼ばれる)を増やす効果も確認されています。
気持ちを落ちつけるリラックス効果は、吐く息にあります。呼吸法を実践するときには吐く息に意識を集中させ、体の緊張も息とともに吐きだすようにイメージして、息をゆっくり吐きながら脱力していくと、リラックス効果が高まります。
心身ともに深くリラックス--漸進的筋弛緩法
特定の筋肉グループにめいっぱい力をいれ、そしてリリーズ(力を抜く)をくり返しながら深呼吸をしていくことにより身体のリラックスを導く方法が、米国の医師、エドモンド・ジェイコブソンが考案した「漸進的筋弛緩法」です。考案者の名前にちなんで、ジェイコブソン・メソッドともいわれます。
【実施法】
実践法としては、足先からスタートする、手からスタートするなど、いくつか方法がありますが、いずれにおいても、各部位の筋肉がゆるんでいくので、その弛緩した状態を体感・体得していきます。
- 床に仰むけに寝て力をぬき、鼻から大きく息を吸って、口からゆっくり吐きます。呼吸だけに全神経を集中させ、3~4回くりかえします。
- 右手で握りこぶしをつくり、目一杯力をいれ、5~10秒キープしたら一気に力をぬいて、10~15秒休みます。左も同様におこない、両手でも同様に。
- 両手の握りこぶしを肩に近づけ、曲った上腕全体に力をいれ10秒間緊張させ、その後15~20秒間脱力・弛緩。同じ要領で、曲げた上腕を外に広げ、肩甲骨どうしをひきつけます。
- 同様に、肩→首→顔面(額、目、口、舌)と進めていきます。いずれの場合もターゲットとする筋肉のみに力をいれて緊張させ、リリーズ(脱力・弛緩)をくり返します。
- 下半身に移り、腹部→お尻→足の順に緊張させてはリラックスをくり返していきます。
- ひととおり終わったら全身の筋肉を一度に10秒間緊張させ、力をゆっくりと抜き、15~20秒間脱力・弛緩します。リラックスしたまま、大きく息を吸って、ゆっくり吐く。これを数回くりかえし、大きくストレッチして終了。
このリラクセーション法は優れたストレス解消法として認知されているばかりでなく、不眠症や顎関節機能不全、禁煙にも効果が確認されています。
お風呂でゆっくり、リラクセーション--入浴&温泉療法
日本人はよく、「入浴好きの国民」といわれます。入浴をすることで血液の循環はよくなり、不必要な老廃物が運びさられ、各細胞に必要な酸素や栄養素がスムーズに届けられるようになります。毛細血管がゆるみ、副交感神経が優位になるので、リラックス効果につながります。
リラクセーション効果を高めるには、少しぬるめの微温浴(37~40度)を。副交感神経が優位となり、快適な刺激とともに鎮静作用を示します。筋肉や関節分の組織が弛緩し、筋肉などのコリ、こわばりが和らぎ、鎮痛効果もあります。血管拡張作用によって血行は促進。血圧が下がることも確認されています。
就寝1時間~1時間半前の微温浴は、あなたに深い睡眠に誘ってくれます。
睡眠の深さは深部体温の低さによるのですが、就寝の1時間半程度前に長めの微温浴で深部体温を1℃程度あげるだけで、就寝時の深部体温を深く下げることができ、寝つきがよくなり、眠りも深くなります。
(「良質の睡眠は、睡眠-覚醒、深部体温、メラトニンの3つのリズムを意識して」を参照)
入浴そのものの効果に加え、古くから温泉には病を癒す力があると考えられてきました。泉質により多少差があるとはいえ、温泉の効能・効果は科学的にも検証されてきています。温泉療法にはリラクセーション効果はもちろん、抑うつ傾向を改善する効果があることなども実証されています。
そこにいるだけで癒されていく--森林浴
樹木に接し、精神的な癒しを求めるのが森林浴です。以前から、森林から発散されている成分、フィトンチッドや森のなかに満ちているマイナスイオンなどによるリラックス効果がいわれていました。
森林セラピーの効果を調べた研究において、リラックス神経である副交感神経が優位になり、交感神経活動が抑制されることや、唾液中コルチゾール(ストレスホルモン)濃度の低下が確認されています。
その他の研究においても、脳波測定・反応速度・唾液コルチゾールの濃度・心拍の変動などの測定や心理的調査などから、森林浴が人間にあたえる影響、リラックス効果などの科学的根拠が示され、予防医療などに役だてるとりくみが、はじまっています。
なお、リラックス効果ばかりでなく、森林浴により、ガン細胞を防ぐNK(ナチュラルキラー)細胞が増えることも科学的に実証されています。
即効性の効果も期待できる--ボディワーク
筋肉の緊張、コリやハリは、ストレス時にもっとも多くみられる症状です。体がストレスを感じると、「逃げるか戦うか」の状況に備えるためアドレナリンとノルアドレナリンが分泌され、これに伴い、体のすべての筋肉が反応し、あらゆるレベルで筋肉の収縮がおこるからです。
ちょっとした筋肉の収縮/緊張であっても反対側の筋肉のバランスを崩し、その結果、姿勢が崩れ、骨格的なインバランスを招き、腰痛やその他の問題を誘発することにもなります。こうしたトラブルに素早く対応し、効果を発揮してくれるのがボディワークです。
ボディワークは、「身体に働きかける技法」ということで、多くの場合、施術者(セラピストなど)による手をつかった技法を指します。各種マッサージ、リフレクソロジー、指圧や整体、オステオパシー、カイロプラクティックなどから、さまざまなエネルギーワークまでふくみます。
どのようなボディワークを選ぼうと、筋肉の緊張が解消されることで心身ともにリラックスし、効果はすぐに実感できます。
リラクセーション効果が期待できるのは、筋肉をほぐすマッサージや指圧のように直接筋肉やツボに刺激をあたえるものばかりではありません。体に軽く触れるタッチセラピー、ストーンセラピー、ペットセラピーなども、緊張している神経、筋肉のこわばりを解消して、リラックスした気分に導いてくれます。
大脳辺縁系に直接働きかけて即効--アロマテラピー
アロマテラピーは植物の花や葉、果実から抽出したエッセンシャルオイル(精油)の芳香や植物に由来する芳香を、リラクセーション、心身の健康などに役立てる自然療法です。
香の成分は、記憶や情動などに深く関わる大脳辺縁系に直接送られ作用するため、素早く心と体のバランスを整えます。神経の緊張をほぐし、気持ちをリラックスさせてくれる香りは、ホルモンバランスの調整やストレス解消にとても効果的です。
精油の種類は、何百種類とありますが、それぞれ異なった効能があります。それらのなかにはストレス解消に役立つことが証明されているものも多く、心と体の状態にあわせて選びます。精油は単独、あるいは数種類をブレンドして、芳香浴、入浴、マッサージなどに使用します。ボディワークに併用すれば、より深いリラクゼーション効果が期待できます。
深いリラクセーション効果でストレスリセット—瞑想
瞑想は心理学的に健康を導くとともに、臨床的に治癒的な作用をもっている可能性が多くの研究で示されています。
不安を軽減し、特定の恐怖症にも有効性が確認されており、アルコールや薬物の乱用を抑える効果、精神科の入院患者にも有益であるとの報告もあります。また、心筋梗塞後のリハビリ、気管支喘息、不眠、高血圧に有効であるという可能性も説かれています。
脳内の神経学的変化の研究では、深い祈りをこめた瞑想は、セロトニン(幸福ホルモン)やメラトニン(睡眠ホルモン)レベルを上昇させ、逆に、アドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンレベルの低下などが確認されています。
最新の研究では瞑想が細胞の老化/寿命にかかわるテロメアの伸長を促進するという研究結果も発表されています。
今この瞬間に集中--マインドフルネス
最近とくに注目されている瞑想法といえば、マインドフルネス。「今この瞬間に意識を集中させ、余分な思考や感情をいれずに現実をありのままの状態として認識する」方法です。
マインドフルネスは、もともと、慢性疼痛を訴える患者に対するストレス低減プログラムとして提唱されましたが、その後、がんや心臓病そのほか多くの身体疾患に起因するストレス、うつ病や不安障害などの精神疾患に対しても応用されるように・・・。非常に高い治療効果をもつ心理療法としても認められています。
「動く瞑想」--ヨガ
最近、ヨガはストレス性疾患/愁訴に対して有効であるという研究報告が増えてきました。ちなみに、ヨガとは、サンスクリット語で、「つなぐ」、「結びつける」、「合体」などのことで、心身の統合、バランスと調和を意味します。
一口にヨガといっても、さまざまな種類や流派が多数存在していますが、もっとも一般的、ポピュラーといえるのが、「ハタヨガ」。体のポーズと呼吸、そして精神を現在に集中させることとを一つに結びつけた“動く瞑想”です。
ヨガは基本的に腹式呼吸でおこない、呼吸をとおしての感情コントロールが身につきます。自律神経バランスが整えられることから、ストレスによる血圧の上昇、血糖値の上昇、心拍数の亢進、消化活動の低下など、交感神経が関与する症状対して効果が期待されます。
かなり大雑把に、代表的なリラクセーション法をご紹介してきました。ぜひ、ご自身の状況にあったリラクセーション法を、うまく生活に組み込み、ストレスレジリエンスを高め、いつもハッピーにお過ごしください。
まとめ
- 「リラクセーション」は、リラックス反応を誘導し、コルチゾールなどのリセット/最適化を図り、ストレス反応を軽減させる。
- リラクセーション法には、呼吸法、漸進的筋弛緩法、入浴&温泉療法、森林浴、ボディワーク、アロマテラピー、瞑想他があり、科学的にストレス軽減効果が証明されているものも多い。
- さまざまなリラクセーション法のなかから、自分の状況にあった、実践しやすいものを生活に組み入れ、日々のストレスをためないようにしよう!
あなたが最高の健康を手に入れ、いつもハッピーでいられますように!