近年、健康や美容、痩せるためにもタンパク質を積極的に摂る人が増えてきたようです。運動やトレーニングにはげむ人が増えてきたことも、その要因かもしれません。
事実、スポーツ庁発表の「スポーツの実施状況等に関する世論調査(2020年2月)」によると、週1回以上運動をする成人は、平成3年には27.8%でしたが、令和1年には53.6%まで増えているそうです。
「高タンパク質・低糖質」がダイエット食のセオリーになっていますが、本当に正しくタンパク質を摂取できているのでしょうか。
- 良質たんぱく質は十分とれている?
- 植物性と動物性、どちらがヘルシー?
- 大豆は良質タンパク質ではない?
- あまりにも低いタンパク質の基準
- 生命現象のすべてを握るタンパク質
- 良質なたんぱく質摂取で細胞の入れかわりがスピードアップ
- まとめ
良質たんぱく質は十分とれている?
高タンパク食が人気の今でも、「タンパク質の過剰摂取ではないでしょうか?」。こんなご質問をいただくいことがあります。
高タンパク食が生活習慣病の要因であるかのように扱われている記事を読んでか、粗食や菜食主義が健康一番!とかいってるテレビ番組の影響でしょうか?
そういえば、「日本人はタンパク質の摂取推奨量は満たしている。むしろ摂取過多の傾向にある」という、発表がおこなわれることもありますね。
でも、普通の生活をしている日本人が、不足なくタンパク質が摂れているかといえば、まず、摂れていないでしょう。
たしかに食品に含まれるタンパク質の「量」だけは、推奨量を満たしています。でも、その「質」はどうでしょうか?
私たちは、「タンパク質は体重1kgに対して最低 1 g~1.5 g は必要」といっていますが、この場合、かならず「良質」という条件がつきます。
良質というのはアミノ酸のバランスがいいということ。さらに吸収率、体内での利用率もよくなければ困ります。
摂取推奨量を満たすだけで、体内のすべての代謝がスムーズにいくなら、日本のすべての人が健康なナイスボディを維持し、病気になる人なんて一人もいないはずです。
植物性と動物性、どちらがヘルシー?
私たちが食事で口にするものを大きくわけると、植物性食品(豆類や穀類)と、動物性食品(肉類、魚介類、卵、乳製品など)。生命はタンパク質なしでは存在しませんから、植物性食品にも動物性食品にもタンパク質はかならずふくまれています。
ただ、それらにふくまれるタンパク質がどのようなアミノ酸構成かは、食物によって異なります。
タンパク質は20種類のアミノ酸という玉が連なってできているネックレスのようなもの。それぞれのアミノ酸の並ぶ順序とアミノ酸が連なる長さによって、どのようなタンパク質なのか、その種類がきまっています。
動物性食品はとかく健康に悪いようにいわれがちです。しかし、必須アミノ酸の量やバランス、体内での利用効率は動物性タンパク質のほうが植物性タンパク質に比べて高く、また吸収率も、植物性タンパク質より動物性タンパク質の方が有利です。これは私たちが動物だからですね。
動物性食品をしっかり食べているお年寄りほど、健康で長生きしている大きな理由の一つはここにあります。
大豆は良質タンパク質ではない?
大豆のアミノ酸スコアは100で、「良質のタンパク質」といわれ、納豆や豆腐などの大豆食品はヘルシーイメージ一色です。しかし、単品のタンパク質源として見た場合、先にも触れたとおり、そのアミノ酸バランス、吸収率や体内での利用効率を考えると、かならずしも理想とはいいがたいのです。以前使用されていた「プロテインスコア」でみると卵が100点満点であるのに対して、大豆は56点でしかないのですから...。
※米国などで広くもちいられている、PDCAAS(Protein Digestibility Corrected Amino Acid Score-タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)においては、例えば、大豆食品の代表格である豆腐は、0.56 [1.0が満点]、また、DIAAS(Digestibe Indispensabe Amino Acid Score)においては、52です。(USDA National Nutrient Database for Standard Referenceより)
あるタンパク質食品に含まれる各アミノ酸が体内で要求されるアミノ酸と同じバランスなら100点満点のタンパク質。プロテインスコアが56というのは、特定のアミノ酸が他に比べ56%しかないということです。
たった一つでも比率が低いアミノ酸があると、他のアミノ酸の利用率もそのレベルに抑えられます。つまり、大豆に含まれるすべてのアミノ酸の利用率が56%にとどまってしまうということです。これでは、タンパク質の「量」を確保したつもりでも、体をつくったり、働かせたりするために必要な各アミノ酸の要求量を満たすことはできません。
自分では十分にタンパク質を食べ、必要量を満たしているつもりでも、体の側からすれば不足状態。そればかりか、利用できない余分なアミノ酸を捨てるという作業のために、腎臓と肝臓に大きな負担をかけることになるのです。
あまりにも低いタンパク質の基準
「でも、大豆は完全タンパク質でしょ?」そんな声が、きこえてきます。
たしかに現在は1985年に設定された”アミノ酸スコア“という基準がつかわれ、大豆、肉類、魚類、牛乳も、ほとんどが、「アミノ酸スコア100の良質タンパク質」という評価があたえられています。
しかし、この基準は非常に甘く、プロテインスコアでいうと、大豆56、鶏肉87、牛肉80、牛乳74、サケ66など、80にも満たないタンパク源もすべて100点満点の良質タンパク質ということになっています。
ある研究では、「アミノ酸スコアを基準にしても体内のアミノ酸ホメオスタシス(アミノ酸バランス)は保てない」と、確認されています。
この研究では、卵のアミノ酸パターンから導きだされるケミカルスコア(プロテインスコアの前につかわれていた基準で、さらに厳しい)でなければ、生体バランスを維持できないとしています。そして、現在の「アミノ酸スコア基準は低すぎであり、レベルアップをはかる必要がある」と結論づけているのです。
自分自身の健康管理には、ケミカルスコアまでは無理としても、
- プロテインスコアの高い食材をえらぶ
- 動物性と植物性を組み合わせて良質度をアップする
- 1食でのタンパク質摂取量は、最低限、自分の手の大きさ(手首から指さきまで)と厚みを確保する
- 1日のタンパク質必要量の3分の1をプロテインスコア100のタンパク質で摂取する (Whey Protein Isolate の摂取がおすすめです)
などを心がけたいものです。
生命現象のすべてを握るタンパク質
卵、肉、魚を中心にタンパク質をしっかりとることが、とても大切ですが、なかには、「太るのでは…?」と心配する人も...。
内臓、皮膚や髪の毛、骨や歯、さらに目玉まで、その重要な成分はタンパク質。血液の成分も、体を守ってくれる抗体や多くのホルモンもタンパク質。酵素もすべてタンパク質です。
体内では10万種類以上のタンパク質が、それぞれ独自の機能をもって、細胞のなかで目的にあうようにつくられたり、壊されたりしながら生命は保たれています。
私たちがタンパク質食品を食べると、消化を経てバラバラのアミノ酸に分解され、血液中に吸収されて各細胞に運ばれていき、体の要求に応じて、つなぎ合わされ、体タンパク質に再構成されて使われます。
体内では四六時中タンパク質の合成と破壊がおこなわれていますが、体が要求するタンパク質を、必要なときに瞬時につくりだすには、材料となるアミノ酸がすべてそろっていなければなりません。
特定のタンパク質をつくる場合に、どのアミノ酸がどれだけ必要になるかは確定しているので、たった1つのアミノ酸不足しても、目的のタンパク質がつくれません。たとえば、インスリンを合成しなければならないのに、その材料になるたった1種類のアミノ酸が足りないだけど、トラブル発生!となるわけです。
体におこるどのようなトラブルでも、それが皮膚のことであれ、過度の脂肪蓄積やむくみであれ、なんらかの疾病であれ、その根底にタンパク質不足が隠されている可能性は大なのです。
良質なたんぱく質摂取で細胞の入れかわりがスピードアップ
つねに若々しく、健康的なナイスボディを維持するためには、体内のタンパク質づくりが常にスムーズにおこなわれることが必須です。
そのためにはいくつかの条件が整わなければなりませんが、まず第一は、タンパク質の材料となるアミノ酸がすべて必要量そろっていること。
つねに十分にアミノ酸が用意されていれば、体内でのタンパク質づくりは促進されます。建設が促進されれば、破壊も促進。つまり、細胞の入れかわりがスピードアップされます。
体の組織の更新が早い、どんどん生まれ変わるという現象は好ましいことです。確実に若返り現象を経験します。
肌は美しくなり、ホルモン分泌は正常に保たれるようになり、無駄な脂肪は落ち、疲れにくくなり、血圧は正常に保たれやすくなり、内臓障害なども起こりにくくなる…などなど、そのメリットははかり知れないのです。
まとめ
- 食品に含まれるタンパク質の「量」は摂取推奨量を満たしていても、アミノ酸のバランスや吸収率、体内での利用効率がよい「良質」のタンパク質は不足しやすい。
- 大豆食品はヘルシーなイメージがあるが、ヒトにとって、動物性タンパク質のほうが良質なタンパク源といえる。
- タンパク質は生理現象のすべてを握り、身体に起こるトラブルの根底にはタンパク質不足が隠れていることが多い。
- 良質なタンパク質がじゅうぶん補給できていると、体内の組織の更新がスムーズになり、若返りにもつながる。
あなたが、最高の健康を手にいれ、いつもハッピーで、ありますように・・。