これまで、「健康のため、朝食はキチンと食べるべき」といわれてきましたが、最近になって、「朝食抜きダイエット」とか、「朝食は食べない方がいい」という説もでてきました。一日の大事なスタートを切る朝食について、こんな180度違う説が出てきたのでは、「一体どっちなの!?ハッキリしてよ!」と文句もいいたくなってしまうでしょう。
ホリスティック栄養学/ストレスニュートリション(ストレス栄養学)の考え方からいうと、どちらの説も正しいとはいえません。正しくは、「朝食は摂るべきだけど、内容が問題」なのです。
目覚めたばかりの身体にとって、消化は大きな負担
「朝食はキチンと」という場合、一日の食べ方として、「朝はたっぷり、昼はそれなりに、夜は少なくが理想」という考え方がベースにあるでしょう。この考え方は、これまで健康雑誌や健康番組で繰り返し伝えられてきていることです。このような食べ方は、ご自分の生活パターンにあっていると思いますか?
「朝たっぷり食べろ」といわれて、朝起きてすぐお腹が空いていますか?「夜は少なく」で、ストレスたまりませんか?
太陽が昇ると同時に目覚め、畑で汗を流し働き、一仕事終えてから、ゆっくり朝食をとる。朝食のあとはのんびり休む。こんなライフスタイルなら、それこそ朝食はたっぷり、しっかり食べた方がいいのかもしれません。
でもご自分のことを考えてみてください。学校や会社に行くぎりぎりまで寝ていて、飛び起きてすぐ、朝は食べた方がいいとばかりに、ごはん、味噌汁、おかず、あるいはパンに牛乳なんかをほとんど噛まない状態でかっこんで、バスや電車に飛び乗って出かける。体内、特に消化器官では活動開始の準備が整う前から無謀な労働を強いられ、大変な負担がかかります。一日の本格的な活動開始前から体は疲れ果ててしまいます。
皆さんが考えている以上に、消化活動は体にとって重労働。食物が口から取り込まれ、体内に吸収されるまでには多種多様な酵素が消化分解にあたりますが、これら酵素を合成する原料であるタンパク質、それぞれの酵素を働かせるために必要なビタミン・ミネラル、酵素をつくったり、働かせたりするためのエネルギーなども多量に消費されてしまうのです。
体内時計のリセットのカギを握る朝食
このようにお話しすると、「やはり朝食を食べない方がいい」と思われるかもしれません。でも、そうではありません。「朝は体のリズムに合わせた食材を選び、消化に負担をかけないように食べる」が、正解です。
ホリスティック栄養学では、1日24時間のサイクルのなか、体内の働きに準じて1日を大きく3つの時間帯に分けて考えます。
- 午前4時から正午までは、デトックスの時間帯。
- 正午から午後8時までは、栄養素を体内に取り込む時間帯。
- 8時から午前4時までが体内に取り込んだ栄養素を利用して細胞の入れ替えを行う時間帯。
しばらく前まで、ホリスティック栄養学では、「朝は、デトックスの時間帯なので、朝食としては、新鮮な果物、または、生の果物ジュースのみが理想」とされてきました。
しかし、現在、時間遺伝子の研究や時間代謝学の観点から、「体内時計のリセットにタンパク質の摂取が必要である」と、されるようになっています。体内時計のリセットは、良質な睡眠のためにも、大切です。
「でも、デトックスの時間帯に、タンパク質を食べていいの?」。
ホリスティック栄養学をかじったことがある人は、そんな疑問をもつかもしれませんね。
先に示したとおり、正確には、ホリスティック栄養学では午前4時から~正午までを、「デトックス(解毒)の時間帯」としています。
デトックスには、「排泄」も含まれますが、各器官(主として肝臓)での解毒を指します。そして解毒には、多くのビタミン&ミネラル類他、アミノ酸(タンパク質が分解されたもの)が必要になります。
朝は、体内時計のリセットにタンパク質が必要になること、デトックスにもタンパク質が必須のこと、さらに、コルチゾールというストレスホルモンレベルが高くなり(後述)、筋肉の分解が進むため、タンパク質摂取は必須ということが解明されているのです。
ただ、朝は、消化器官がマクシマムに活動をはじめていません。朝のタンパク質摂取は、特に消化に負担をかけない食材選び、また、負担をかけない食べ方をする必要があるのは、これまでのホリスティック栄養学の考え方と変わりありません。
また、人によっては、タンパク質がうまく分解できない人もいますので、そのような人には、単純に「タンパク質をとったほうがいいよ」とは、いえません。
朝食は、コルチゾールリズムも考えて
コルチゾールというのは、ストレス時にとくに多く分泌されるホルモンですが、通常、朝・高く、夜・低くなる概日リズム(サーカディアンリズム)をもっています。このホルモンは、血糖値を上げるとともに、タンパク質の分解を促すホルモンでもあります。筋肉をはじめ、体内の重要なタンパク質の分解を防ぐためにも、朝食でタンパク質を確保する必要があるわけですね。
血糖値コントロールにも朝食は必要
すでに触れた通り、コルチゾールは血糖コントロールに関わるホルモンです。血糖値をあげる方向で働きます。コルチゾールレベルは朝、8時~8時半位ピークとされます。
この朝食の時間帯に、「糖質」を食べることは、さらに血糖値をあげることにつながります。「菓子パン朝食」なんて、もってのほかですね。朝食の時間帯は、GI値やGL値の高い「糖質」は控えることが鉄則です。
食物繊維の多い果物は、デトックスにプラスに作用するだけでなく、朝食後血糖値の改善にプラスに作用しますので、朝食に果物を食べることは、おすすめです。
朝食を抜くことは、血糖コントロールの面からも好ましくありません。それは、
- 朝食の時刻が遅くなるほど、朝食前血糖値が上昇。朝食前血糖値が高い日は一日中血糖値が全体的に高くなりやすい。
- 朝絶食して、昼食をその日の1回目の食事としてとった場合の昼食後血糖値は著明に上昇する。
- 8:30以前の朝食は、Ⅱ型糖尿病リスクを軽減する可能性がある。
などなどが、最新の研究で解明されているからです。
これが、朝食?
こうした最新の知見を総合すると、朝食は、(消化のしやすさを考えた)タンパク質+果物+良い脂肪少々を8時30分前に食べるのが理想ということになります。なお、一般的にイメージしている「朝食」である必要はありません。
一般的にイメージしている「朝食」というより、むしろ、消化に負担をかけず(朝は特に重要)に必要な栄養素の確保に目をむけることです。
例えば、吸収がいい「ホエイプロテイン・アイソレート」を飲み、果物&ナッツを食べる・・あるいは、プロテインとベリー類などの果物やナッツを一緒にブレンダーにかけたものを飲む・・。忙しい朝にピッタリな、理想的な「朝食」といえます。
ホリスティックな朝の習慣
朝は、デトックスの時間。それを最大限に活かすため、ちょっとしたことを習慣に…。
まず朝起きたらすぐ、大き目のカップ(グラス)のミネラル水で体内を目覚めさせましょう。寝ている間に失われた水分を補給するとともに、寝ているあいだにたまった老廃物を流し出しましょう。スムーズな排泄を促すには、朝の水(白湯)が大きな力を発揮。この時200ccの水に対してレモン半分~1個分を絞り入れれば、より効果的です。
ただ、気を付けたいのは、冷たい水は飲まないこと。起きたてに冷たい水を飲むことで、お通じが良くなると思いこんでいる人は意外に多いもの。でも、これは体にとって問題行動。胃がキュッと収縮すると同時に、腸の働きも鈍ります。室温以上、ちょっと温めに感じるくらいの白湯を摂取することで、ストレートに腸に届き、腸のクリーニングがはじまります。
白湯をゆっくり飲み、4~5回大きく深呼吸。鼻から空気を吸い込んで胸を大きく膨らませ、その後、ゆっくり口から息を吐いていきます(これもデトックの重要なステップ)。そして、朝の準備。歯を研き、顔を洗い、服を着替えてから食卓へ。
体の浄化を進める朝食として最適なのは、食物繊維たっぷりの新鮮な果物。そして、タンパク質でしたね。良質な脂肪も必要なので、ゴルフボール1つ分程度のナッツ類を。アボカドも良質脂質を含むのでおすすめです。
果物は何を選んでもかまいません。1種類でも、2~3種類組合せてもOK。ゆっくり、よく噛んで食べることです。先に書いたように、プロテインと一緒にブレンダーで撹拌するのもグッドです。
果物ではなく、他の「糖質」、たとえば、オートミールとかキヌアを食べるのであれば、ゴルフボール1個分程度。タンパク質としは、自分の手の大きさ(手首から指先まで&手の厚さ)を目安に…。プロテインを飲むであれば、20gが目安です。
まずは一週間続けてみよう
これまで朝食をしっかり食べていた方は、「こんな朝食では、力がでない!」と思うかもしれません。でも、騙されたと思って一週間つづけてみてください。
最初の3日間位は、ちょっと物足りなさを感じるかもしれません。でも、4日目あたりから、体調の変化を実感できるはずです。目覚めが良くなり、日中は疲れを感じなくなり、活力が溢れてきます。太り気味の方は、自然に体重が減ってきます。便秘も改善。肌の調子も、ずーっと良くなってくるはずです。
このように、体のリズムに合わせた食べ方は、いつまでも美しく、健康で過ごしたいと思っている方はもちろん、体調をくずしている方にとっても、早期健康回復のきっかけとなるはずです。
まとめ
- 朝食は、体のリズムに合わせた食材を選び、消化に負担をかけないように食べることが大切。
- 体内リズムのリセットには、朝食にタンパク質が必要。ただし、消化に負担がかからないような工夫が必要。
- コルチゾールリズムを考慮し、朝は高糖質食品を控え、GI値&GL値の低い果物を選択するのがおすすめ。
- 朝食時間が遅くなればなるほど、その日の血糖コントロールが難しくなり、糖尿病のリスクも上昇する。朝食は、午前8時半前が理想。
あなたが最高の健康を手にいれ、いつもハッピーでありますように・・。