きちんと食事もとっているし、よく寝ている。運動量も十分なのに、なぜか調子がでない…。不調のかげには病気が隠れているケースもありますが、検査しても異常がみつからない場合、意外な盲点となるのがビタミンやミネラル不足です。
きちんと栄養バランスを考えた食生活さえしていれば、ビタミンもミネラルも不足することはないと考えられていたのは過去のこと。
農地や農法、流通や貯蔵方法などの問題で、いまや農作物のビタミン&ミネラル含有量は、30年前の何十分の1といわれるほど減少の一途をたどっています。しかも、調理によってさらに減少。
いくら「1日30品目」「バランスよく」食べたところで、体内の働きに必要なビタミン・ミネラルの確保はできないのです。
- 身体の調子を整える微量栄養素の役割
- 毎日しっかり補いたい水溶性ビタミン
- 新たな研究、続々!脂溶性ビタミン
- 不足させたくないカルシウム&マグネシウム
- 女性に多い鉄欠乏性貧血
- 体内酵素の働きを支えるビタミン・ミネラル
- まとめ
身体の調子を整える微量栄養素の役割
ビタミンやミネラルを微量栄養素といいます。微量と呼ばれるのは、文字通りわずかな量をとるだけで作用があらわれる栄養素だからです。
たとえばタンパク質は、毎日、数十グラム必要ですが、微量栄養素はmg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)単位の摂取量。にもかかわらず、体内では重要な役割を果たしています。
ビタミンは、代謝の調節や生理機能の調節などに関わっています。尿中に溶けて排泄されやすい水溶性ビタミンと、脂質に溶けやすい脂溶性ビタミンに分けられます。
一方のミネラルは、体内に約60種類が存在しますが、カルシウムやリンのように骨や歯などの構成成分となったり、ナトリウムやカリウム、カルシウムがどのように体液の調整に関わったり、あるいは鉄、亜鉛、セレンなどのように生理活性物質の構成成分となるものなどがあります。
また、ビタミンやミネラルの多くは、体内で働く代謝酵素のサポーターとしての重要な働きを担っています。
毎日しっかり補いたい水溶性ビタミン
水溶性ビタミンの代表といえば、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)。
体内でうけもつ仕事はそれぞれ違いますが、エネルギーづくりには互いに助けあいながら働き、どれか一つでも不足するとエネルギーづくりに支障がでて、疲れやすくなるなどのトラブルが発生します。
B群は神経や精神にも深く関わっているため、不足したり、B群を消耗しやすい糖質食品ばかり食べていると、イライラ、頭痛、不眠、脱力感、落ち込み、引きこもり、うつ症状までもでてくる可能性が…!
B群は水分代謝にも関わっていますから、不足すると、むくみやすくもなります。
抗酸化作用で有名なビタミンCは、たるみなど老け顔防止に重要なコラーゲンの合成や、シミの原因となるメラニン色素を抑えるなど、アンチエイジングに欠かせないばかりか、体内のあらゆる代謝(酵素)をサポートします。
ビタミンCは、消耗されやすい栄養素でありながら体内で合成できないので、日々摂取しなければなりませんが、野菜や果物からだけでは十分量補うのは難しいもの。サプリメントで手元に置いておきたい栄養素の筆頭格ですね。
新たな研究、続々!脂溶性ビタミン
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミン。
よく、「脂溶性ビタミンはとりすぎてはいけない」ということがいわれますが、食事で摂取している分には、まったく心配いりません。また、サプリで摂取する場合でも間違ったとり方をしないかぎり過剰になったり、問題を起こすことはありません。
ビタミンAが不足すると皮膚や粘膜の乾燥、暗がりでの視力低下などの原因になります。主に動物性食品に含まれ、なかでも卵黄に豊富です。
日本ではビタミンAはサプリメントとして認められていません。このため、サプリでとる場合は、体内でビタミンAに変換されるβカロテンなどのカルテノイドでとるのが一般的です。ただ、βカロテンをとっていても、肝臓にトラブルを抱えている場合、βカロテンがビタミンAに変換されずビタミンA不足を引き起こすことがあります。
ビタミンAは、海外からの個人輸入で手に入ります。ただ、その場合、十分に気をつけたいのは、絶対に活性型のビタミンAを摂取しないこと。活性型というのは合成の誘導体で、天然のビタミンAとは似て非なるもの。天然のビタミンAは、体内で何重もの調節を受けて、必要な分だけが働いてくれます。しかし、活性型は、核内に直接作用しますので、副作用のリスクが大きいのです。
ビタミンDは骨の代謝に欠かせない栄養素で、不足すると、くる病や骨軟化症の原因になることが昔から知られていますが、最近、このビタミンDに関する新しい研究が次々に出てきています。
たとえば、抗がん作用、激しい運動での筋肉損傷の予防や早期回復作用、女性の脳力維持における働きなどなど。とくに、免疫力の向上やアレルギー症状を改善させるなどの研究結果がでていることでも注目を浴びていますし、新型コロナの予防においても重要な役割を果たすということから、ビタミンDの売り上げが急増したとの報告もあります。
ビタミンDは、きくらげやシイタケ(いずれも乾燥)に多く含まれ、また、紫外線を浴びると、皮膚中でコレステロールから合成されます。
栄養療法では、花粉症などのアレルギーや自己免疫疾患に、ビタミンDのサプリメントがすすめられます。オーソモレキュラー療法に詳しい溝口徹先生は、「まずは、2000IUを目安に摂取」をすすめています。ビタミンA同様、ビタミンDも活性型は避け、天然のものを選択するのが鉄則です。
不足させたくないカルシウム&マグネシウム
ビタミン類はかなり多量摂取しても、まず問題をおこすことはありませんが、ミネラルは、不足と過剰摂取の範囲がとても狭く、少なすぎても多すぎても体に不調があらわれます。
そのなかでも、過剰摂取の心配がないといわれるほど日本人に不足しているのがカルシウムとマグネシウム。戦後、日本人のカルシウム摂取量は約2倍に上昇していますが、それに対し、マグネシウムの摂取量はほぼ横ばいです。カルシウム/マグネシウムは、ブラザーミネラルともいわれ、カルシウムとマグネシウムの比率が、とても重要です。戦後のカルシウム/マグネシウム摂取比率の変化に伴い、狭心症や急性心筋梗塞などによる死亡率が増えているとする報告もあります。
カルシウムは、体の中でもっとも多いミネラルで、その99%は骨と歯に。残りは1%は、体内のイオンバランスの維持、筋肉の収縮や血液凝固、血中濃度の維持、神経細胞の電気的興奮、情報伝達ほか、生命の維持や活動に重要な役割を果たしています。
だからといって、カルシウムをサプリメントでしっかり摂ればいい、という訳ではありません。カルシム不足は、骨粗鬆症、高血圧や動脈硬化、心疾患、不整脈、痙攣、しびれ、不安や抑うつ、糖尿病などをおこしやすいとされます。しかしながら、こうした症状は、血中のカルシウムが不安定になった場合、つまり、マグネシウム不足でもおきます。そして、このような症状には、カルシウムを安定させるマグネシウムをとったほうが効果的といえるのです。
最近は、「ストレスには、カルシウムが必要」とまことしやかにいわれ、カルシウムサプリに飛びつく人も多いようです。でも、イライラする、足がつりやすい、片頭痛などのようなストレス反応がでている場合も、マグネシウムサプリのほうが適しています。もし、カルシウムサプリをとるのであれば、単独では絶対にとらないことです。かならず、マグネシウムが一緒に含まれているものを選ぶようにしてください。
以前は、カルシウム対マグネシウムの比率は、2対1が理想とされていましが、最近では、1対1の比率をすすめるようになってきています。また、カルシウムやマグネシウム(特にマグネシウム)のようなミネラルは、吸収が難しいので、キレートされたもの、グリシン酸やクエン酸カルシウム・マグネシウムがおすすめです。また、原料にドロマイトが含まれていないサプリメントを選ぶようにします。
女性に多い鉄欠乏性貧血
女性は毎月生理があるので鉄が不足しやすいといえます。過激なダイエットで不足することも。鉄不足といえば、最初に思い浮かぶのは、「貧血」でしょうね。
鉄は血液中の赤血球と結びついて細胞に酸素を送り届けているので、体内の鉄が足りなくなると、細胞に新鮮な酸素が十分に供給されなくなります。そのため鉄が不足すると、顔色は蒼白気味で、全身の倦怠感、慢性疲労をはじめ、さまざまな症状に悩まされることに...。貧血が進めば心臓に負担をかけ、心不全になることもあるのです。
鉄不足は、月経のある女性に圧倒的に多いのですが、安易に鉄のサプリメントに飛びつくのはNGです。鉄は活性酸素の発生源なんですね。鉄はとても錆びやすい金属で、鉄が多すぎると体内も錆びつかせてしまいます! 鉄欠乏性貧血の診断をうけない限り、鉄錠には手をださないほうが無難です。また、閉経後の女性や男性の場合、マルチビタミン&ミネラルに鉄が含まれているものは避けるようにします。
鉄分を食品で補うには、吸収率の高い動物性食品がおすすめです。ただ、貧血予防食品の代名詞になっている「レバー」(肝臓)には、まだ解毒されていない有毒物質が残っている可能性があるので、おすすめできません。
貧血には鉄分のほか、タンパク質とビタミンCを一緒にとるとよく、逆に、紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーヒー、玄米など鉄の吸収を阻害するものは、極力避けるようにしたいものです。
体内酵素の働きを支えるビタミン・ミネラル
体内の酵素は、ビタミンやミネラルのサポートなしには働くことができません。従って、タンパク質などの3大栄養素をしっかり食べていても、ビタミンやミネラルがなければ、エネルギーを生みだすことも、筋肉を動かすこともできないのです。
栄養素は食事からとるのが基本です。健康的な食生活を心がけるべきなのは当然ですが、それでも気づかぬうちに不足してしまうのが、ビタミン&ミネラルです。
サプリメントの摂取を考える場合、「○○によい」とか、「△△に効きそう」とかいわれるものに飛びつく前に、ご自分の栄養素的基盤として、まず、マルチビタミン&ミネラル系のサプリで微量栄養素を全般的に補うべきでしょう。その上で、特に気になるトラブルなどがあれば、それらに対応する単体あるいは複合のビタミンやミネラル、アミノ酸、ハーブ類などのサプリメントを加えるといいでしょう。
まとめ
- 微量栄養素とよばれるビタミン・ミネラルは、体内で重要な役割を果たしているにもかかわらず、普段の食事では必要量を満たすことは難しい。
- ビタミンB群やビタミンCなどの水溶性ビタミンは、消耗されやすい栄養素でありながら体内で合成できないので、日々摂取しなければならない。
- 脂溶性ビタミンについては、新たな研究結果が続々と発表されており、注目をあつめている。
- ミネラルは、不足と過剰摂取の範囲がとても狭く、少なすぎても多すぎても体に不調があらわれる。
- カルシウム&マグネシウムは過剰摂取の心配が不要なほど不足。閉経前の女性は鉄が不足しやすいため、効率よく摂取したい。
- マルチビタミン&ミネラル系のサプリで微量栄養素を全般的に補ったうえで、特に気になるトラブルや要望があれば、それらに対応する単体あるいは複合のビタミンやミネラル、アミノ酸などのサプリを加えるのがベスト。
あなたが、最高の健康を手にいれ、いつもハッピーで、ありますように・・。
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