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テフロン加工のフライパンは焦げ付きにくいけど、人体への影響は?

テフロン加工のフライパン、焦げ付きにくいけど人体への影響は?

オプティマルヘルス(最良の健康状態)を目指し、食材はなるべくオーガニックのものを選び、身体に良くないとされている食材を避けるように心がけているとしても、もしあなたが今使っているフライパンや鍋などが、その努力を台無しにしてしまうとしたらどうでしょうか? 

そこで今回は、テフロン加工されたフライパンなどの調理器具について考えてみたいと思います。

テフロンって?

テフロン加工のフライパンなどの調理器具は1960年代に発売されて以来、「焦げ付かない」「手入れが簡単」ということで、今や日本でも広く普及しています。

この 「テフロン」はアメリカのデュポン社(現在:ケマーズ社)の商標名であるため、一般的にこの化学物質の総称は「フッ素樹脂」、そしてそのフッ素樹脂を使う技術を「フッ素樹脂加工」と呼んでいます(ここでは、テフロン、テフロン加工で統一します)。

* ケマーズ社は2015年3月にデュポン社の子会社として設立。その後、7月にデュポン社から分離独立。フッ素化学品事業がケマーズに移ったことに伴い、テフロンの商標登録は現在ケマーズ社が所有

テフロン加工は人体に有害ともいわれるけど・・

このテフロンの安全性に関しては、2005年に米国環境保護庁(EPA)の科学諮問委員会(Science Advisory Board:SAB)が、テフロンの製造の際に助剤として使用されているPFOA(パーフルオロオクタン酸)について「発がん性があるらしい」と発表したことにより注目を集めました1

その後、テフロンについては健康に害を及ぼす、毒ガスが発生する、また奇形児が生まれるなどといった様々な問題が提起されてきました。では本当にテフロン加工された調理器具は危険なのでしょうか。それともこのまま使いつづけていても大丈夫なのでしょうか?

テフロンの安全性を考える場合、テフロンの素材自体の安全性、そしてテフロン加工されたフライパンなどの調理器具の使い方による安全性に分けて考える必要があります。

テフロンの主原料、PTFEに発がん性は認められない

テフロンの主原料となるのは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)と呼ばれるフッ素樹脂です。フッ素樹脂にはいくつかの種類がありますが、なかでもPTFEはいろいろ用途に最も多く使われています。

PTFEは分子量が1万以上結合してできた高分子化合物であり、水や油をはじく、熱に強い、薬品に強い、光を吸収しない等の特性をもち、フライパンなどの調理器具の他にも自動車、半導体、衣服などさまざまなものに使われています1

このPTFEに関して発がん性は認められず、テフロン加工のコーティングの一部がはがれて体内に入ってしまっても吸収されずにそのまま排出されてしまうために、特に毒性はないとされています

テフロンの人体への影響/健康リスク

それではなぜ、テフロンの人体への影響が問われているのでしょうか?

それは、テフロン製造過程で使われるPFOA(パーフルオロオクタン酸)の有害性が明らかになったからです。このPFOAは自然界でほとんど分解されず、人体や環境中に長く残るため「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれています。

隠蔽されてきた真実

デュポン社では1961年当時から、PFOAの人体に対する有毒性を知っていながら、その事実を長い間隠蔽していました2

しかし1998年以降、テフロン製造工場で働いていた従業員の健康被害が公になり、また工場周辺の飲料水から高い濃度のPFOAが検出され、近隣住民の間では深刻な健康被害があることが分かってきました。これを受けて2000年代に入り、米国ではデュポン社に対する大きな訴訟問題へと発展しました。

これらの状況のもと、2006年にフッ素樹脂製造メーカーが2015年までにPFOA使用を段階的廃止することに合意しました。デュポン社も現在ではPFOA使用をやめ、2013年以降はPFOAフリーのテフロンを販売しています。

環境にばらまかれたPFOAを体内に取り込むと・・・

環境にはらまかれた有害物質を体内に取り込むと

2005年に発表された研究によれば、PFOAを使用したテフロン加工の調理器具を使った場合、そこからPFOAが体内に入る可能性は低いといわれています3。しかし既に環境に蓄積したPFOAは、主に飲料水や食品から体内に取り込まれ、また授乳中の子供には母乳を通して取り込まれていきます4


その後、2019年には残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POP’s条約)により、PFOAの廃絶が決定されました5日本でも2019年に全国的な水質調査が行われ、調査を実施した171地点のうち13都府県の37地点において、目標値を超える化学物質(PFOA/PFOS)が確認されています6

現在までの研究で、PFOAがコレステロール上昇、未熟児、奇形児、甲状腺ホルモンレベルの異常、肝臓の炎症、および免疫力低下にも関与していることが明らかになってきました7。そして肝臓がん、前立腺がん、精巣がんなど、さまざまながんに罹患するリスクを高めることも分かってきています8

PFOAフリーのテフロンであれば有害性はないのか

デュポン社はPFOAを使わずにテフロンを製造するために、GenXという化学物質を新たに開発しました。GenXはテフロンと同様に商標名であり、この化学物質名はヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(Hexafluoropropylene Oxide Dimer Acid:HFPO-DA)です。

GenX にPFOA同様の毒性が?

2013年以降はGenXを使ってテフロンのフライパンなどの製造はつづけられていますが、2017年に製造工場がある米国のウェストバージニア州やノースカロライナ州の川からこのGenXが検出されたことにより、周辺地域の飲料水の安全性に関する懸念が高まりました。そして同年6月に米国環境保護庁(EPA)は,GenXの毒性データを見直し、リスク評価を更新することを明らかにしました。

その後2021年1月に発表された米国環境保護庁(EPA)の研究チームの論文では、ラットを用いた研究において、GenXPFOAと同じ程度の毒性がある事が分かったと報告しています9

また同年10月に発行されたEPAのGenXに関するファクトシートでは、肝臓、腎臓、免疫システム、そして生まれてくる子供に対する悪影響が懸念され、さらに癌との関係も考えられるとあります10

「規制されていない」から、「安全」?

しかし、現在このGenXの商標を所有するケマーズ社は、GenXはPFOAよりも早く人体から排出されるために問題はないとし、その安全性は研究でも明らかになったと主張しています11

現時点ではGenXは規制されていませんが、「規制されていない」から「安全」とは言いきれません。そして環境や健康への影響は、残念ながらまだ十分に検証されていません。しかし、PFOAで起こったことを振りかえれば、GenXを使用したテフロンも避けたほうがよいのでないでしょうか。 

高温になったテフロンからは有毒ガスが発生

高温になったテフロンからは有毒ガスが・・

最初に説明したとおり、テフロンはPTFEという化学物質によって作られています。PTFEの使用温度の上限は260℃であり、350℃を超えると熱分解により微粒子状物質が発生し、さらに430℃で有害なガスが発生します。そこでテフロン加工された調理器具、とくにフライパンなどは空焚きをせず、中火で使用するようにという注意がなされています12

例えば食材をフライパンで普通に調理をする場合、フライパンの温度は150℃~190℃、食用油を熱したときに油煙が出はじめるのが約200℃といわれています12。ですから空焚きをしてフライパンの温度が350℃以上にならないと、人体には害がないとされています。

しかしアメリカのEWG(環境ワーキンググループ)が2003年行った調査によれば、テフロンはたった5分の短時間の過熱で380℃という予測外の高温になったとしています。さらに200℃前後で使用した場合でも、有毒ガスで室内にいたペットの鳥が死んでしまう事例がいくつか報告されています13

テフロンで空焚きをしてはいけないと知らなかった場合、またはちょっとした不注意で空焚きの状態になってしまうことは十分考えられます。日本でもペットの犬が、テフロンの空焚きから生じた有毒ガスにより死亡した例があります14

人の場合、この微粒子や有毒ガスを吸いこむことにより、ポリマーヒューム熱と呼ばれるインフルエンザに似た症状を引き起こすとされています。具体的には、のどの痛み、発熱、息切れ、頭痛、咳などの症状が現れます。この症状は吸入後48時間には改善し,吸入後3~7日で症状が消失するといわれていますが15アレルギー体質の人などは、症状が長引くこともあります12

まとめ

確かにテフロン加工のフライパンなどの調理器具には便利で使いやすいというメリットがあります。しかし、これまで見てきたように、世界規模での環境破壊、そして人体への影響、さらに使い方を間違えることでの健康リスクの発生などを考え合わせると、もっと安全に使えるテフロン加工以外のフライパンや鍋などの調理器具を選ぶことを、おすすめしたいと思います。

jhna-stresscare.info


筆者: 豊田 幸代
JHNA認定ストレスニュートリショニスト
認定ホリスティックプラクティショナー

参考資料

  1. 食品安全委員会作成 ファクトシート フッ素樹脂概要
    https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f02_fluorocarbon_polymers.pdf
  2. The Case of DuPont's Pollution and the Importance of CSR
    https://www.triplepundit.com/story/2016/case-duponts-pollution-and-importance-csr/29241
  3. T. H. Begley, K. White, P. Honigfort, M. L. Twaroski, R. Neches & R. A. Walker:
    Perfluorochemicals: Potential sources of and migration from food packaging, Food Additives and Contaminants; 22(10), 1023-1031(2005)
  4. 食品安全委員会作成 ファクトシート パーフルオロ化合物概要
    https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/f03_perfluoro_compounds.pdf
  5. 条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)とは
    https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pops.html
  6. 令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査の結果について
    https://www.env.go.jp/press/108091.html
  7. Our Current Understanding of the Human Health and Environmental Risks of PFAS
    https://www.epa.gov/pfas/our-current-understanding-human-health-and-environmental-risks-pfas
  8. Perfluorooctanoic Acid (PFOA), Teflon, and Related Chemicals アメリカ癌センター
    https://www.cancer.org/cancer/cancer-causes/teflon-and-perfluorooctanoic-acid-pfoa.html
  9. EPAの研究者チームによる論文
    Hexafluoropropylene oxide-dimer acid (HFPO-DA or GenX) alters maternal and fetal glucose and lipid metabolism and produces neonatal mortality, low birthweight, and hepatomegaly in the Sprague-Dawley rat (Environment International Vol. 146, January 2021, 1066204)
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412020321590?via%3Dihub
  10. Human Health Toxicity Assessments for GenX Chemicals
    https://www.epa.gov/chemical-research/human-health-toxicity-assessments-genx-chemicals
  11. ケマーズ社ホームページ
    https://www.chemours.com/ja/about-chemours/global-reach/fayetteville-works/fayetteville-works-toxicology
  12. ふっ素樹脂製品取扱マニュアル」日本弗素樹脂工業会
    http://www.jfia.gr.jp/publication/images/handling_manual.pdf
  13. Canaries in the Kitchen - Environmental Working Group
    https://www.ewg.org/research/canaries-kitchen
  14. ポリテトラフルオロエチレン中毒の犬の1例
    https://www.suetsugu-ah.jp/news/docs/hamai_essay.pdf
  15. テフロン加工フライパン4時間の過燃焼により生じたフューム吸入による肺水腫の1例
    http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/044100727j.pdf