近年、健康食品として注目されるようになったオートミール。オートミールの健康上のメリットから、美味しそうなオートミールレシピがサイト上に溢れています。日本では、オートミールには目新しさがあるのかもしれませんが、イギリスでは、1000年も前から食べられていたとか。
オートミールは、オーツ麦(燕麦)を脱穀して、調理しやすく加工したものですが、乾燥した状態から、水や牛乳などで軽く煮るだけで食べられることから、朝食のシリアルとして食されることが多いといえます。
オートミールには多くの健康上のメリットがありますが、すべての人にとってプラス作用するわけではありません。食べる場合に注意したほうがよいようなこともあります。
今回は、まず簡単にオートミールの健康上のメリットをお伝えしたうえで、デメリットにも触れていきましょう。
オートミールの健康上のメリットは?
オーツ麦は、「地球上もっとも健康的な穀物」といわれるほど、ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化栄養素などが、他の穀物に比べ豊富です。多くの研究で、オーツ麦およびオートミールの健康上のメリット(減量効果、血糖値レベルの低下、心臓病のリスク軽減)が裏付けられています。
まず、簡単に、オーツ麦やオートミールを食べることのエビデンスにもとづいた健康上のメリットを見ておきましょう。
- オーツ麦は、栄養価が高い。
オートミールは、全粒穀物であるため、精白した穀物よりもビタミン、ミネラル、食物繊維(水溶性、不溶性とも)が豊富です。 - ホールオーツは、アベナンスラミドをはじめとする抗酸化物質が豊富。
ホールオーツには、抗酸化作用のあるポリフェノールが多く含まれますが、オーツ特有のものもあり、血圧効果作用、抗炎症作用が知られます。 - オーツ麦の水溶性食物繊維の大部分はβグルカン。
- オーツ麦由来のβグルカンについて、血中コレステロール値上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用、血圧低下作用、排便促進作用、免疫機能調節作用などが多数報告されています。また、オーツ麦に含まれるβ1,3グルカンは、心臓病の発症リスクを低くするともいわれます。
- オートミールは、非常に満腹感があり、減量に役だつ可能性がある。
β-グルカンが満腹ホルモン(ペプチドYY)の放出を促進することで、少ないカロリーでも満腹感を得られるため、肥満解消に役立つ可能性がある。 - コロイダル・オートミール(オートミールを微細パウダーにしたものを外部使用)は、スキンケアに効果的。
いかがですか?このようにメリットを並べると、健康を維持するにはオートミールを食べるべき!と思えてきてしまいますね。
でも、すべてのオートミール製品が同じではありません。その加工度によって、調理時間がちがったり、身体への影響にも違いがでてきます。
オートミールの種類を知ろう
オートミールは加工法により、いくつかの種類がありますが、その大元になっているのが、ホールオーツ。ホールオーツは、オーツ麦のもみ殻をとり除いたもので、お米でいえば、玄米みたいなものです。そこから、加工されていき、調理時間の違いや、独特の食感が生まれます。
それでは、オートミールの仲間をみておきましょう。
スチールカットオーツ
脱穀した麦を2~3つにカットしただけで、ロールドオーツのように蒸したり、ローラーで伸ばしたりしていません。スチールカットオーツは、ボリュームたっぷりの食感で、コンロを使って、約25~30分の調理時間です。
カットされただけで加工されていないため、オートミールの仲間のなかで、もっとも消化に時間がかかりますが、ホールオーツの栄養的メリットがそっくり保たれています。また、スチールカットオーツのGI値(グリセミック指数)はオートミールのなかでもっとも低いので、血糖値コントロールを目指している方に最適です。
ロールドオーツ(オールドファッションオーツ)
脱穀した麦を蒸してからローラーで伸ばしたものです。しっかりした食感で、コンロでの調理では5分、電子レンジであれば、2~3分で調理完了です。ロールドオーツには味がついていないので、まずいと感じるか、自分で味付けを工夫しなければなりません。
クイックオーツ
ロールドオーツを細かく砕いたものです。なめらかな食感で、電子レンジで1分、コンロでも1~2分で調理できます。
インスタントオーツ
ロールドオーツをさらに細かくカットしたもので、調理は電子レンジで90秒。インスタントオーツは、オートミールのなかでも加工度が高いため、GI値は必然的に高くなります。血糖値の安定を優先したい方は、この種類はパスしたほうがいいでしょう。
また、インスタントオーツのなかには、さまざまな香料や甘味料が加えられている製品が多く出回っています。ほかの種類のオートミールは味気がないので、自分でスパイスや甘味をつける必要がありますが、インスタントオーツではその必要がなく、すぐ食べられます。ただ、これらは、砂糖や他の甘味料、香料などが想像以上に多くつかわれている「高糖質食品」であり、食品添加物も多いので、避けたほうが無難です。
なお、「オートブラン」は、オーツ麦のもみ殻をとり除いた後の外皮で、「オーツ麦のふすま」のことです(オートミールの仲間ではないですね)。オートブランは、コレステロール値を改善する効果がよく知られています。
オートミールの問題点/デメリット
どのような食品であっても、プラス面があれば、かならず、なんらかのマイナス面があります。“最高の健康食”ともいわれるオートミールであっても例外ではありません。
5つの問題点/デメリット
それでは、どのような問題/デメリットがあるか、簡単にみておきましょう。
- オートミールは穀物であり、他の穀物同様、アンチ栄養素特性をもっています。
①ミネラルと結合して吸収を阻害するフィチン酸が含まれています。
②腸壁を刺激してリーキーガット症候群の発症などにつながるレクチンが含まれています。 - ご飯やパン類に比べればGI値は低いとはいえ、高デンプン/高炭水化物食品であることにかわりなく、血中を「高糖」状態に…。とくにオートミールの加工度が高くなればなるほど、この傾向は強くなります。「健康食」「美容食」といっても、食べ過ぎれば、当然太ります。
- オートミールそのものは、美味しいといえるものではありません。そのため、ほとんどの人がスパイスや、砂糖、はちみつ、シロップなどを加えます。これが、2番目の問題を増幅させ、さらなるトラブルを引き起こすことにつながります。
- オートミールを食べただけで、グルテンに対するアレルギー症状を示す人がいます。オーツ麦に含まれるタンパク質の一種、アベニンの構造がグルテンと似ているため、免疫系がアベニンをグルテンと勘違いして攻撃することがあるためです。
- オートミールには、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方が豊富に含まれているのはいいのですが、普段から食物繊維をあまり食べていない人にとっては、消化の問題を引き起こします。
消化の問題
消化のトラブルには多くの原因が考えられますが、不安やストレス、早食いや食べ過ぎ、飲酒、辛い食べ物、脂肪の多い食べ物などが原因であることがよくあります。同様に、オートミールのように、レクチンや食物繊維が豊富な食品も消化不良ほか、消化のトラブルを引き起こす可能性があります。
胃の膨張
健康な人にとっては一般的ではありませんが、食物繊維をあまり食べる習慣がなかった人が、いきなりオートミールをたくさん食べたり、常食するようになると、胃の膨張が簡単に引き起こされます。これは、突然の食事の変化によるものですが、腹部のけいれんや鼓腸(腸内にガスが充満して、腹部がふくれる)による痛みや不快感を引き起こす可能性があります。
こうしたトラブルを回避するには、いきなりオートミールをたくさん食べるようなことはせず、オートミールの量を少しずつ徐々に増やしていくようにすることです。そうすることで、腸内細菌叢は、新たに入ってくる栄養素をうまく処理し、新しい環境におけるバランスがとれるようになります。
胃の膨張は、多量の食物繊維に対して腸内環境が追い付かないことによってのみ起こるわけではありません。オーツ麦のタンパク質、プロラミン不耐性のために起こる場合もありますし、単純に慢性消化不良(悪い消化)の一症状ということもあります。
オーツ麦によるガスの充満
食物繊維が胃と小腸を通過して大腸にたどりつくと、腸内細菌がその分解にかかります。この過程でガスが発生します。二酸化炭素と水素、場合によってはメタンと硫化物も発生します。これらのガスが充満することで膨満感を引き起こします。この状況では、腸壁にかかるこのガス塊の圧力による痛みに苦しむ可能性があります。
消化不良/ガスの発生を予防するには
- クイックオーツのように加工度の高いオートミール製品から試していく。インスタントオーツのほうが加工度は高いものの、香料や甘味料が加えているケースが多いため、おすすめできません。
- オートミールの摂取は少ない量から、徐々に増やしていきます。55グラムの摂取から、10日かけて85グラムに増やすように...。
- オートミールを、食べる前夜からソーキングする(水などに浸す)とともに、消化酵素と混ぜると◎。こうすることで、消化されにくいタンパク質の問題、またレクチンの作用も軽減できます。
- オートミールは、少量をゆっくりと、よく噛んで食べるようにします。完全に噛み砕いてから飲みこむことにより、消化の問題を発生させる可能性が低くなります。
- 水分も十分に飲むようにします。十分な水分がないと、食物繊維は消化プロセスを遅くする傾向があります。
オートミールを食べてはいけない人は?
健康食だからといって、誰にでも向いている食品とは限りません。オートミールを食べることのメリットが、人によってはマイナス作用してしまうこともあります。どのような場合にオートミールを食べるべきではないのかを、見ておきましょう。
腸にトラブルを抱えている
過敏症腸症候群、吸収不良症候群、腸炎、クローン病、憩室炎、リーキーガット症候群など、腸のトラブルを抱えている人は、症状を悪化させやすいため、オートミールほか、オーツ類の消費は避けるべきです。急性の下痢や胃腸炎の場合は、回復するまで食べるのを控えましょう。
グルテン不耐性/セリアック病
グルテン不耐症、あるいはセリアック病の人は、オートミールほか、いかなる形状であってもオーツ麦を食べるべきではありません。オーツ麦そのものにはグルテンはふくまれませんが、オートミールは、グルテンを含む他の穀物類と同じ施設で加工されることが多く、その過程でグルテンが混入する可能性が高いといえます。
オートタンパク質の不耐性
オートミールを食べからしばらくたって、お腹がはる、下痢、だるさなど、何か不快な症状がでるようなら、あなたの身体はオーツ麦に含まれるタンパク質をうまく分解できないのかもしれません。
不耐性には免疫は関わりませんが、未消化のタンパク質が血中に取り込まれると、食物アレルギー(遅延型-IgGが関わる)が発生します。オートミールを食べてから6時間以上たってから症状がでる場合も多く、発生している症状が食物不耐性、あるいは遅延性食物アレルギーによるものと気づかないケースも多く、問題をこじらせます。
オートアレルギー
オートアレルギーにおいては、オーツ麦のタンパク質(アベニン)が抗原となり、それを“敵”とみなして排除しようとする免疫系の異常な反応を引き起こします。遅延型食物アレルギーと違い、IgEが関与するため、症状は数分から、通常30分程度であらわれます。
症状としては、皮膚のかゆみ、のどの違和感、目の充血、鼻水や鼻づまり、咳、くしゃみ、呼吸困難、下痢、嘔吐、胃痛など。オーツ麦のアレルギー反応の強さは、軽度から中程度、重度の場合もあります。オーツ麦に過敏な人にとって、オートミールなどの消費は深刻な健康問題となり得ます。
鉄欠乏性貧血
オーツ麦は、鉄の腸からの吸収を阻害します。鉄欠乏症貧血の人はもちろんですが、普段から貧血気味の人は、オートブランや加工度の低いオートミールの種類は避けた方が無難でしょう。
糖尿病
オートミールのGI値は高くはないとはいえ、炭水化物の比率が高いため、糖尿の病患者は、オーツ製品を食べる場合には予防策を講じる必要があるとされます。毎日の炭水化物摂取量をきちんと測定し、問題なくオーツ麦を食事に加える方法を探してみてください。
まとめ
- オートミールは、オーツ麦(燕麦)を脱穀して、調理しやすく加工したもので、ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質が他の穀物類に比べ、豊富に含まれる。
- オートミールには多くの健康上のメリットがあるものの、すべての人にとってプラス作用するわけではない。
- オートミールのメリットとしては、血中コレステロール値上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用、血圧低下作用、排便促進作用、免疫機能調節作用などが知られる。
- オート麦やオートミールのデメリットとしては、①フィチン酸やレクチンの存在、②加工度、食べ方によっては血糖値を上げる可能性、③味気がないので、余分な糖分などをプラスしやすい、④グルテンに対するアレルギー症状を示す人がいる、⑤食物繊維が豊富な故、消化に問題を起こす人もいる。
- 消化や腸に問題を抱える人、グルテン不耐症やオート不耐症/アレルギーの人、鉄欠乏貧血の人などは、オートミールを控えるべき。糖尿病の人は、医師と相談してとり入れるのが安心。
あなたが最高の健康を手に入れ、いつもハッピーでありますように!